今シーズン共に結果が出ていないとはいえ、自分たちのサッカーを貫く、
という意味ではJ屈指の両チームであり、スタイルとして共通する部分も
多いため、色々な意味で好ゲームになるであろうと予想していたのだけ
ど、正直予想を超えた素晴らしいゲームだった。サッカーの面白さという
部分が様々な面において表現されていた試合だったと思う。
まずジェフとヴァンフォーレの対決という時点で、打ち合いになるであろ
うことをまず想像したのだが、正にその展開。攻守の切り替えもはやく、
しかも全てが単なる一発カウンターの応酬などではない、緻密な展開
からの素晴らしい崩しによる打ち合い。何度もため息が漏れたし、この
試合を生で見れた人は幸せだと思った。
この試合、好ゲームを期待しての面以外にも、両チームの今後を占う
意味でも非常に重要な試合だった。この部分に関しても凄く興味深く、
勉強になったシーンが随所に見られた。とりあえず、僕は千葉サポの
友人がけっこういるので、千葉寄りで見ていた視点から思ったことを
つらつら書いていこうと思う。
まず、千葉は公式戦6連敗中の上、監督批判によっての謹慎処分で
攻守の要のストヤノフを欠く、という選手にとっては非常にプレッシャー
のかかる試合であった。サポーターのかもし出す雰囲気も相まって、
この試合にかける気合がビンビン伝わってきた。
ジェフが勝ちきれない要因の一つ、決定力の欠如。特にエースストライ
カーの巻のスランプが大きかったのだが、前半思わぬことに、巻の
ループシュートが決まり、千葉の先制。キーパーが前へ出ていることを
見ての、落ち着いたシュートだった。この点の取り方は誰もが予想し
えなかったであろうし、当の巻本人が一番ビックリしたのではないか。
さて、甲府も試合開始から随所に「らしい」プレーを見せ続けていた
のだが、この巻の思いもかけぬシュートによる失点後も、それは全く
変わらず。この辺は流石チームとして完全に根付いた戦い方なんだな
と関心させられた。そしてすぐに同点シーンが訪れる。
右サイドからペナルティエリア内へ繋がれたボールは、細かく選手を
経由して、ジェフディフェンス陣との混戦に。そこを藤田が上手く走り
込んできた石原に落とし、ゴール。密集したところを綺麗に抜けた
ゴールに、やはり千葉は負けが続いているチームであると再認識。
同点になってから、巻が競り合いの中で相手DFに顔を踏まれ、流血
してしまう。このとき、僕は「得てしてこういう時って、流血した選手の
ヘディングで決まるもんだよな」と思ったら、やはりCKを巻がドンピシャ
ヘッドで叩き込む。こういうのって本当に不思議だ。
僕の一番好きなサッカー漫画「俺たちのフィールド」の中でも、
テクニシャンの騎馬拓馬が試合中足を負傷しながらも、
「ボロ足やろうが、だからこそ決めてやるんや」
と言ってCKを直接決めるというシーンがあるのだけど、やはり実際
にも選手の心境として、「負傷なんかに負けるてたまるか」という強い
気持ちが全面に乗るからなのか、それによって集中力が増すのか、
不思議とゴールを決めることが多い気がする。なにより、こういう時の
ゴールはノる。これで巻は完全復活かもしれない、と思った。
しかしながら、後半開始早々甲府に追いつかれ(これも勝っている
チームでは抜けてこないシュート)、次に迎えたジェフのチャンスは
なんとPK。そして蹴るのは巻。これには正直驚いた。
巻が志願してのことなのか、周りが蹴らせたのかは分からないが、
どちらにせよエース巻をこの試合で完全復活させようとする意志が
強く感じられ、このPKで全てが変わるのではないか、そう思った
のだが、まさかまさかのPK失敗。これでこれまでのこの試合の
積み重ねが「ゼロ」に戻った。正直この試合の結果が、これで
このまま引き分けか負けであったなら、巻も、そしてチームももう
立ち直れないくらいのダメージを受けていたであろう。
なによりサポーターが限界に達したに違いない。
それを救ったのは羽生だった。千葉において、この羽生と水野だけ
は連敗中も、他のオフェンスプレイヤーよりは悪い状態でなかったと
僕の見立てでは思っていたのだが、その羽生の真骨頂ともいうべき
飛び出しからの技ありゴール。ジェフらしいゴールで勝ち越しを
決めた。これは本当に大きかったと思う。
これを機に、ジェフに変化が見られるようになっていく。今まで簡単に
抜けてきた相手のシュートが、キーパーの目の前に来るようになり、
相手の決定的シュートがバーに当たり、そして圧巻だったのは、
際どいシュートを立石のスーパーセーブの連発で凌げるように
なっていった。
恐らく、今までであればあのうちの何本かはゴールされていたであろう。
多分、何かが変わったのだと思う。もちろんその現象は、勝ちきれて
いない甲府によるところもあるのだが、それでも千葉の何かが変わった
と思わせるような、試合終了と同時の選手、ベンチの喜びよう。
憑き物が取れたかのような巻の笑顔には、今後ゴールを決めるように
なるのではないかという根拠の無いなにかを感じた。それもこれも、
全てはあの羽生の決勝点、これに尽きると思う。もちろん立石の
スーパーセーブの連発という部分が目立ったのだが、それを引き起こ
したのもあの羽生のゴールだったのではないかと思う。
巻は今日羽生に飯おごってあげないとネ(笑)
恐らく、千葉は今後変わるのではないかと思う。それはもちろん次節
の結果という部分によって大きく左右されるものでもあるが、なにか
今日の試合の流れが、今までジェフを苦しめてきた原因が一つづつ
そぎ落とされていくように感じた。
一つ、気がかりなことはもう一つの得点源である山岸だけにはその
変化が感じられなかったことくらいか。また決定的な一対一を外して
しまった。彼もまたジェフの低迷の要因の一因を担っていると思うので、
次のジェフの課題は「山岸のゴール」ではないかと思う。
いずれにせよ、この機会を逃してはジェフの今期の復活は難しいのでは
ないか。流れを変えるにはこれ以上の試合はないように思う。
最後に甲府について。
甲府も今後を担うという意味で凄く大事な試合だったと思う。もともとが
戦力として厳しいというのが分かりきっているだけに、ジェフほど試合
結果に気持ちが左右されないチーム状態ではあると思うが、もしこの
試合を勝っていたら、今後一気に上昇気流に乗れるかもしれないと
思わせるような試合だった。シュートに至るまでの崩し方は秀逸。
見ていて本当に面白い。勝とうが負けようが観るに値するサッカーを
していると思う。
今日は茂原が途中で審判に不信感を抱いたことで、PKをもらいに
シミュレーションに走ってしてしまったシーン、あれがこの試合を左右
したのではないか、僕はそう思っている。あれを倒れずにシュートまで
いっていたら、あの時点のジェフではゴールされていたのではないか、
そう感じてならない。
とりあえずスカパー入ってる人は再放送で見てみてください。
他サポでも凄く楽しめる試合ですよ。
(他サポだからこそ無邪気に楽しめるのかもしれないが…)