もう、会えない。
東京オリンピックに向けて、
いろいろなモノが登場する、その年に、
消える景色があることを心に刻む。
建設中の八ッ場ダムを見に行った。
2020年には、ダム湖となる。
フッと、思い出した、亡き父の言葉。
19歳のとき。妹は15歳。
父から、
『引っ越そうと思うが、どうだ?』
と、ふたりは、訊かれた。
事業拡大のために、『一駅下る』という話だった。
土地スペースは、3倍以上に拡大するが、
ほぼ感情だけで、この兄妹は、反対した。
引っ越しに。
私は、3歳から。妹は、生まれた時からの地所。
子どもたちの意見を尊重して、諦めた父。
たった『一駅下る』話にさえ、乗れなかった私。
故郷を二度と見ることのできない7000人の中には、
離れがたい気持ちを持つ人がいることは、当然だろう。
そして、わが身を振り返ってみて、
あの日の判断は、今の自分に、
どう、振りかぶってきているか。
結果論だから、わかる、プラスとマイナス。
それでも、思う。
たったひとつの『自分には変えられない』事象が、
ほんの少し、神様の気まぐれで変わるだけで、
私は、この『プラス・マイナス』に、違う解釈を与えるだろう。
八ッ場を故郷とする方々の未来に、何が起きるかは、わからない。
良い解釈のできる結果が待つことを祈るばかりだ。