新型サイバーナイフ全機回収に思うこと
2005年8月
申請手続きに問題のあった、
新型サイバーナイフが、
医療機関の現場より、
全機回収、撤去が行われた。
今日、明日、
命に関わる手術を執刀しなければならない、
そんな、環境の中で。
申請手続きのトラブル、
というだけで。
これは
「法と正義との間に歪みが生じた場合、
その社会は、いかに対応すべきか。」
という問題である。
民主主義法治国家の社会の一員としては、
平生は、法を守り、
後に、ないしは、同時に、
正義に基づいた法への改正を請願する
というのが正しい姿であろう。
しかし、危機においては、
法と正義では、
正義のほうが上位規範であることを
肝に銘じなければならない。
なぜなら、
法とは、過去100年程度の常識の平均であり、
正義とは、今、この時代、この場所、の常識だからだ。
そして、危機の時とは、
当該事項に関して、
特段の知識があるわけでもない一般市民でさえも
「このままではまずいことになるぞ。」
と感じる時である。
日本は人治国家ではないのだから、
そんな危機の時こそ、
主権者の名代たる政治家や
国家権力を後盾とした行政官の
想像力や判断力の問われる場面である。
待ったなしの患者を抱えて、
旧型のものより優秀な新型サイバーナイフを
全機回収は、『ない』だろう。
たとえ、
申請ミスで、法的には不当であっても、
権力側の対処方法は間違っている。
主権者である国民に
不正義なる医療機器が使われることのないように
厚生労働省が責任をもって監視してくれていることは、
ありがたい。
しかし、患者のことを考えれば、
当該医療機器に関し、
許可がおりるまでは主権者である患者が
結果責任を全て負うことを条件に、
継続使用への道を探り、
無事許可がおりたら、
今回の事態に限り、
諸事、
許可が事前におりていたものと同様に扱う、
など、
「主権者のために」
を、第一義的に発想して、
判断してもらいたいものだ。
どうも、西洋の法律を
噛み砕くことなく輸入した我が国では、
非遡及原則について、
いささか履き違えてみえるほど愚直である。
申請ミスをした輸入元等には
患者に迷惑のかからない時期と方法で
法は法として充分に処分すればよい。
生命、人体、に影響を及ぼさない、
と考えられる食品添加物問題を
あれだけの大事件として取扱い、
結果、
多くの食品を廃棄させ
(世界には今日も餓死した子供たちがいるというのに)、
かたや、
フェロシアン化物は、
諸外国からの批判を避けるため、
どこからも使用許可申請がでていないのに
使用許可を出している。
国内のどこからも、
科学的データの蓄積と解析の報告も申請もなしに、
行政は、許可している。
厚生労働省は、誰のために働いているのだ。
官庁の面子か、職員のことなかれか。
同省職員の家族の中にでも
サイバーナイフで
直ちに治療をする必要のある患者でもいない限り
想像力も働かないのか。
改正食品衛生法にもあるように、
広くパブリックコメントを求める義務が
この場合にもあるだろう。