「夏への扉」ロバート・アンスン・ハインライン | MARIA MANIATICA

MARIA MANIATICA

ASI ES LA VIDA.


 
「ぼくが飼っている猫のピートは、冬になると“夏への扉”を探しはじめる。
家にたくさんあるドアのどれかが夏に通じていると信じているからだ。
そしてぼくもまた、ピートと同じように“夏への扉”を探していた。」

・・・こんな紹介文と、何よりもこの「夏への扉」という素敵なタイトルから
勝手にレイ・ブラッドベリが描くような少年と猫のひと夏の冒険譚を
イメージしてワクワクしていた私でしたが、全然そんなお話ではなかった。

技術者のダンは研究熱心なアイディアマンで、より良い製品を作ることに
夢中になっている。
そんな彼を支えてきた親友のマイルズと、秘書で恋人のベルだったが
ある日ダンはふたりに裏切られて、冷凍保存で30年後の未来へ送られてしまう。

もともと自分でも冷凍保存の利用も考えてはいたのだが、
その前に二人の裏切りに対して抗議に出向いた際に、彼らが悪意を持って
契約していた別の会社を使って送られてしまうことになった。
一緒に未来へ行くはずだった愛猫のピートもつれてくることはできなかった。
30年後の未来で目覚めたダンは、新しい知識を仕入れ準備を重ね、
失った自分の人生を取り戻すために過去へ旅をする計画を立てる。

ダンの発明品は今のお掃除ロボットや設計用のCADなどを思わせるし
まだ形になっていないアイディア類もなかなか面白く興味深かった。
ここにSFの定番(?)コールドスリープやタイムリープが加わり
期待は膨らみましたが・・・私がSFを読むときに浸りたい高揚感とか
希望とかスケール感とか、それとやはり何と言ってもSFならではの「ロマン」に
ものたりない部分がかなりあったように思う。

あの時の行動、伏線がここでこうやって生きてくるのか~!!!というのもなく
行き当たりばったりなのに都合よく行っちゃう、みたいなところがもう一つだったかな。
入れ物も小道具もSFなのですが。

一番気になったのは、マイルズの養女(マイルズの亡くなった妻の連れ子)リッキィとの
関係というか、彼らの未来が私には何とも醜悪なものに思えたな。げんなり・・・。
21歳になったときにもその気持ちが変わらなかったらコールドスリープを選択し
2001年に会おうと約束する・・・それがロマンとは私には思えないけど、
そう感じる人もいるのかもしれない。
ただ1970年の時点でリッキィ11歳というのが、どうもね。

作品中に出てくる1970年も2000年も2001年も私は知っているだけでなく、
さらに2015年というもっと先の日付を生きている。
特に1970年は、生まれたばかりというわけではなくある程度の分別も
当時の多少の記憶すら残っている年でもあるけれど、コールドスリープも、
ましてやタイムマシンも1970年当時はもちろんのこと2015年においても
まだまだ身近なものにはなっていない。
まあ私はずっとそれでいいと思うよ。



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