「象の消滅」 村上春樹 | MARIA MANIATICA

MARIA MANIATICA

ASI ES LA VIDA.



全部で17篇の短編集です。
いずれも一読したことがあるので迷っていたけれど、アメリカで発行された
短編集と同じ収録内容ということに興味があったので結局読んでみた。
外国人がどんな作品を選ぶのか???

読後感は(私には)そこはかとなく物悲しさの漂うものではありましたが
いずれ劣らぬ秀作だったし、こういう形でセレクトされたものを
まとめて読むというのもいいものだなと思いました。

ひとつだけかけ違えたボタンのために、生じてしまった大きなズレみたいな
感じかなあ。
どこでかけ違えたかわかったとしても取り戻せないし、もし取り戻せたとしても
やはりボタンをかける前とは微妙に違ってしまっているその悲しみ。
そういうことの繰り返しだったよねえ・・・なんて思ってます。

どの作品もとても良かったのだけど、今回は特に「中国行きのスローボート」が
良かった。
以前読んだ時にどんなことを感じたのか、もう忘れているけれど
こんなにまで印象的だったかな、と悩んで?います。
それから「眠り」。
これはすごく気に入ったというわけではないのだけれど、
ただただ何とも言えない怖さがこれも印象的。

以前から好きな「4月のある晴れた朝に100%パーセントの女の子に
出会うことについて」と「午後の最後の芝生」は・・・あいかわらずの
静かな刺激。静かなのだけど、あちこち感情のスィッチが押されて
たまらない気分になっております。
は~・・・ほんと、たまりません・・・うう。

村上春樹といえば「喪失感」という言葉がセットとなって
あちこちの書評やら感想文に使われているけれど、
正直私はあまりそういう印象を持ったことがなかった。
符牒的に便利な言葉として使われているように思えて
ちょっとシニカルな気分で見てはいたのですが・・・でもやはり今回は
「喪失感」かあ・・・ちょっとわかるかも、と思ったりしています。

とにかくここからすぐに脱出したいような、このまま浸っていたいような
そんな微妙な読後感が未だ漂っているのでありました。

かなり高品質な短編集で、とても満足。


「象の消滅」 短篇選集 1980-1991/新潮社

¥1,404
Amazon.co.jp


こちらは英語版。


The Elephant Vanishes/Vintage

¥1,677
Amazon.co.jp