「ティファニーで朝食を」 トルーマン・カポーティ | MARIA MANIATICA

MARIA MANIATICA

ASI ES LA VIDA.

大雪で外出は諦めて、読みました。
外はしんしんと積もる雪、寒い日に外に一歩も出ずにゴロゴロと本読み三昧というのは
私の一番好きなシチュエーションの一つ。は~、これぞ至福の時。余は満足じゃ♪

龍口・村上と訳者違いの文庫でもうそれぞれ何度か読んでいるけれど、
今回はこのティファニー・ブルー風の素敵な装丁の1冊で、どうしてもどうして~も
読んでみたくて・・・の再読です。
どれ読んだって同じでしょ?って言われそうだけど、そんなことは全くないのよ。ホントに。

カポーティの作品はいくつか読んだけど、「冷血」とこの「ティファニーで朝食を」が
やはり突出しているかなと思います。
でも「冷血」は秀作だけどあまりにも救いがなさすぎて結構辛いし、長いし・・・で、
やはり私にはカポーティといえばこれかな、と思います。
なんとなく閉塞感があるときに読みたくなる1冊のような気もするけど。

お話は、主人公ホリーの友人である男性の視点で語られています。
ストーリーは、ゴシップ的で非日常的な世界という点では
日ごろお見かけしないお話ではあるけれど、ずば抜けて面白いかどうか。
でも、やはり文章が、表現が素晴らしい。
本を読んでいてこの頃思うのは、主人公に感情移入していく面白さももちろん
あるのだけど、使われる言葉、会話、文体そのものを味わうこともまた
小説の楽しみなのだと言うこと。

ホリーって19歳なんだ!と、多分前回も驚いたと思うけど(もう忘れている)
特別大人って印象があるわけではない・・・分別もあまりないし・・・
でも19歳にしてこの哲学というのはやはりお話の主人公だけのことはあるなあと
なんだかおかしなことを考えてしまった。
何をして生活の糧を得ているのか、はっきりとはわからないけれど、
したたかにたくましく軽やかに生きる彼女。
決して立派な人生だとも思えないし、私にとって魅力的な人間かどうかもわからない。
けれど、この軽やかさと潔さが私はとても好きで、毎回(いいなあ!!!)と思うのです。
特に「ホリー・ゴライトリー 旅行中」というネームカードがたまらなく好き。
どこかに根をおろすのは魅力的に思えるけど、なかなかそんなところはないし、
そんな場所を永遠に探し続けるのもまた素敵だし、なによりもそれを実行できることが
私にとっては憧れだ。
これがカーポーティの世界観と言えるのかなと私は思ったけど、どうかな。

やはり以前にも読んだ3つの短編もそれぞれ素敵です。
「花盛りの家」で元の世界に帰らずに山奥で暮らすオティリーも、
「ダイアモンドのギター」で相方に裏切られたシェーファーも、
そして「クリスマスの朝」の、温かい家からはるかに隔てられたところで
年老いた今は亡き友達を思うバディーも、どの主人公についても
読み手としてはどこか寂しさや理不尽さを感じないわけには行かないけれども、
でも全体を通して感じるのは、それはそれとして次のステージへという
読み手としての期待感みたいなものかな。
その人にとって特別な意味を持つ輝かしき時間との決別ではあるけれども
そんな宝を持つ人にもう不幸など訪れないような気がする。
あとは、そうだな・・・より大きな世界へという意識をどの作品からも
私は感じたかな。
その大きさは、決して第三者には比べられないものだろうけど。

この翻訳はもちろん村上春樹。
昔からこの作品が好きだったそうで、やはりそれは文章の合間からよくよく伝わってくる。
この小説を何度も何度も繰り返し読み、髄まで味わい尽くした挙句の力作という印象です。
あとがきもいつもながら良かった。評論家としても十分生活できそう!?

また時間を置いて読み直そうっと。
これは私にとっては殿堂入りの1冊、大好きだ~!!!!!!


2・9追記: ホリーの愛用のコロンはあの「4711」でした。
なぜ私がうれしいのかわかりませんが、嬉しい♪


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