「天然コケッコー」 (DVD) | MARIA MANIATICA

MARIA MANIATICA

ASI ES LA VIDA.


私の好きなくらもち作品を映画化したもの。

とにかく映像がとてつもなく美しいです。
舞台となった島根県でのロケーションが大半ですが、
この古きよき日本そのものの風景だけでも相当和めます。
田んぼや、分校の生徒たちのやり取りなど、ともすれば
ジブリ映画に持って行かれそう。
そしてそうなったとしても、全く違和感のなさそうな雰囲気でした。

誰もいない海の岩場でトマトを冷やしたり、
広い縁側で涼を取ったり、
木造の校舎や百葉箱とか、
なんでも売っている1軒しかないお店とか、
自分の子供の頃の思い出や、あるいは盆暮れに訪れる田舎の家が
ある方ならば「わかる~!!」と郷愁呼び起こされるような
既視感のある風景がいっぱいです。

原作では主人公のそよちゃんたちの高校生活も描かれていましたが
映画は高校入学直前までです。
それでもほぼストーリーに忠実に映像化されていたように思います。

また全員の役作りがものすごくて、どの配役見ても
漫画そのものなのがとても笑えたし、ひたすら感心しました。
どこから探してきたんだ!?という思い。

本当に大きな事件がほとんどない、一見淡々とした原作なのですが、
このくらもちふさこという方は、コマ割りとか、目線とか、
風景などによって、少女の心に起きた波をとてつもなく
上手に表現する方なのです。

先にも書いたように映画は確かにストーリーに忠実なのですが、
そういう心の葛藤などがかなり不足しているように思いました。
ある日ある日の出来事を、つないでいっただけという感じ。
主人公の内面をモノローグで表すわけでもないので
原作知らない方にはわかりづらい部分も多いかもしれません。
まあ、ごちゃごちゃうるさい解説が入るのも私は嫌いだけど。
そういう意味では起伏があまりに乏しくて、私はDVDを
見ながらちょっとダレてしまいました。

特に、そよちゃんの父親と、大沢くんの母親の怪しい関係なども
疑わしい場面をそよちゃんが目撃しただけで、その伏線が
回収されないままなのは、気になる人には気になるんじゃないかな。
スイカで顔を撫でる理由が語られていないことや、お祭りの夜の
伊吹ちゃんが単に意地の悪い女の子のように描かれてしまったのは
原作ファンとしてはとても残念。
伊吹ちゃんの天真爛漫さというか、何も考えていないあの鈍さによる
純粋な魅力などが描けていないのも惜しいなと思いました。

でもどんな作品にせよ、原作愛好家からは必ず映像化にあたっては
細かい指摘は出てしまうのは、よくあることとお許しいただくとして、
相対的には良い作品だったと思います。
特に風景の美しさは目にも脳にも優しく素晴らしいものなので
機会があればぜひ、とおすすめしたい作品ではあります。

いざ夏休み~!って感じの今、これ見たら
田舎に帰りたくなると思いますねえ。
特に、初恋の君との思い出がある人ならば、なおさら。
☆つけるなら5個中の4個ってところでしょうか。
それはもう、ただただ失われし自分の時間へのノスタルジーと
四季の風景の美しさについての評価が大半なわけですが。

まずは予告編でお好みに合うかどうかをご確認ください。
私は、映画本編よりもコンパクトにまとまったこちらのほうが
ポイント突いていて正直うるうる来ちゃいます。







天然コケッコー [DVD]/角川エンタテインメント

¥4,935
Amazon.co.jp



文庫版は読みづらいけど、コミックスには入っていない
書き下ろしが1篇収録されています。
第20回講談社漫画賞受賞作品。
え?講談社?と思って調べたら、他社の作品も対象みたい。
見直しちゃったよ、講談社!!
ま、とにかく名作。


天然コケッコー 全9巻セット (集英社文庫―コミック版)/集英社

¥5,670
Amazon.co.jp