「いわゆるA級戦犯」  小林よしのり | MARIA MANIATICA

MARIA MANIATICA

ASI ES LA VIDA.


「戦争論Ⅱ」を昨年読んで以来、いくつか小林作品を読んできましたが
感想までは書いていませんでした。今回は久々です。

A級、B級、C級と分けられていた戦犯ですが、それがどのように決定されたのか
東京裁判とはどういう性質のものだったのかを、何人かの戦犯として処刑された
人々の顛末を描きながら、丁寧に解説してあります。
戦犯の決定方法がここに書いてあるとおりならば、暗澹たる思いになる・・・。

「戦争論Ⅱ」を読んだことで、単に「戦争=悪」で思考停止をしていては
ダメなんだと思い至りましたが、ここで語られていることもやはり変わりありません。
読んだことのない方が思っているほど、小林よしのりは過激なことを書いているわけでもなく、
奇をてらっているわけでもないと思うのですが。
どうしても人は最初に目に入った文章や、持っているイメージでかなり左右されて
しまうことがあるようです。
漫画という表現手段だから、余計それは強いのかもしれません。

あの時代の流れの中では避け得ない事情を、日本人として理解しておくべきだと
主張しているに過ぎないし、私はそのことについては大いに賛同します。

この本ではなく「戦争論Ⅱ」のレビューを以前読んだとき、多くのレビュアーが
これを支持していたけれども、逆に批判も多かったのは事実。
それはそれで構わないと思うのです。
むしろあの1冊、この1冊で考えがたやすく変わって「よしりん=神」みたいに
思ってしまうことのほうが危ない気もします。 
私も興味を引かれた作家はある程度まで追いはしますが、同時に硬軟、左右・・・
取り混ぜて読み、ニュートラルな位置に自分がいられるように心がけてはいます。
ま、私の思考には多少の傾向はあると思うけど・・・。

でももう戦争は起こらないだろうから興味なければどうでも良いのことなのかも。
でも8月15日に毎年放映される似たような番組の最後で、司会者が毎回神妙な顔で
「この悲劇を2度と繰り返してはならない」などとという決まり文句を聞くたびに
それはそうなんだけど何か物足りない、と思っていた私にとってはとても興味深い
シリーズなのでした。

漫画とはいえ、いつもながら文章も多くかなり読み応えがあります。
登場人物の顔もよしりんの立場からの「善悪」によって描き分けられているので
やはり読者の印象も左右されることにもなると思う。
また、これは強引すぎる解釈なのでは、と思える部分もいくつかあります。
それはあの「戦争論Ⅱ」他についても言えることで、このあたりが小林よしのりの
個性というか、攻撃される(嫌われる?)ポイントのひとつかもと思います。
でもこの1冊を鵜呑みにしたり、解った気になるのではなく、きっかけの一冊として
読んで見るのも良いと思うけど。
渾身の1冊「戦争論Ⅱ」には及ばないけど、久々に読んですっきりしました。



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