大島弓子は私にとってはずせない作家ではあるけれども、苦手意識もある。
初期の頃の作品は今回初めて読んだけど、いかにも古の少女漫画と言う感じで
どこかしら強引さを感じた。
考えて見ると、当時は貧乏な女の子がピアニストに憬れて、紙鍵盤で練習したり、
亡くなった母の意志をついでバレリーナを目指したり、病魔(多くが白血病)に倒れたり、
結構、ヘビーな内容が多かったなと思う。
当時は、現実などわかっていないし、そういう世界もあるんだ位に思っていたから
それなりに感情移入して、一緒に悲しんだり喜んだり、あこがれたりしていたけど。
かわいいちび猫が主役の「綿の国星」をはじめ、繊細な絵や詩的なせりふで
一見漂うほんわかムードですが、でも「本当は怖い大島弓子の世界」だと以前から思ってた。
今回、デビュー作を含む初期の未知の作品の数々を目にして、やはり昔からその要素が
あったのだと改めて実感・・・というか、まだ大島弓子も若いせいか今よりもずっと
そういう面がダイレクトに表われていて、読んでいて息苦しくなってしまった。
無理心中だとか、継子問題だとか、中・高校生の妊娠だとか、不治の病だとか・・・
そういうもののてんこ盛りです。
とにかく若い主人公たちに課せられた運命や環境の残酷なこと、この上なし。
昨夜読み終えたあと、記憶にあるいくつかのその後の作品などについて
考えてみたけど、そういえば意外にも我の強い登場人物も多かったな~と思った。
「私が幸せだからあなたも幸せなはず」という思い込みみたいなもので
押しかけ花嫁さん的なものも多かった。
それは周りを取り囲む大人たちについても同様で「あなたにとっては
その方が幸せなのです」なんて断定形の言動をするパターンも結構あったなあと思う。
でも大島弓子のあの独特の言葉と美しい絵が、いつもそれにソフトフォーカスを
施して、一見やさしげでやわらかな雰囲気の作品に見えるのが不思議。
良い作家さんで好きですし、特に猫についてのエッセイ漫画は面白い。
でも多くの読後は結構重くて、次!次!と読めるものではないのですよね。
初期の作品については、再読はしばらくなさそう。お疲れしちゃったよん。
大島弓子選集 (第1巻) 誕生/大島 弓子

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