ヴィヴィアン・リーの演じたブランチがあまりにも有名で
映画、原作ともに知らずとも大まかなあらすじは知っていましたが、
う~ん、なんともやるせないですね。
妹ステラを尋ねて、「DESIRE(欲望)」という名の電車に乗って
ブランチがニューオリンズにやってくる。
かつては豪農の令嬢だったものの、ブランチはすべてを
失ってしまい行くところがない。
ステラが暮らすポーランド系の工員・スタンレーの狭く
プライバシーも保てないアパートに同居することになる。
プライドが高く虚飾の塊のブランチと、たくましく現実的な
スタンレーとは全く相容れない。
やがて彼女が実家の荘園を失った後に娼婦のごとく
すごしていたことをスタンレーが知り、ブランチに想いを
寄せていた自分の友人ミッチにも伝わり、彼との仲も終了する。
その上、ステラが出産のための入院中、スタンレーから
暴行を受けたブランチは、精神のバランスを崩し、
虚実の見分けがつかなくなっていく。
どの人物の視点で読むかによって、感想は異なると思う。
ブランチ目線ならば、ナイーブな神経を徹底的に破壊され
救いのない不幸となるだろうし、スタンレー目線ならば
鼻持ちならないブランチを撃退できて、勝利ということに
なるだろう。
裏表紙の簡単な解説の一部に「滅び行く過去の美と、
現実世界の粗暴とは言えたくましい正を鮮やかに描いた」
とあるように。
でもステラ目線では・・・姉を想う気持ちも強いが、
それ以上に夫に首ったけ状態のステラは後悔しつつも
ブランチを精神病院に送ってしまう。
例えば、突然やってきたブランチを老いた母として
スタンレーを気の強い嫁、その嫁に強く抗えない夫を
ステラと置き換えてみたら・・・・ああ、普遍的問題。
やだやだ。
名門出身のプライドを落ちぶれても持ち続ける姿は
同じくヴィヴィアン・リーの演じたスカーレット・オハラに
よく似ている。
でも、ブランチにはスカーレットのようなたくましさも
強さもなかった。
個人的には圧倒的にスカーレットが好きだけど、16歳の時から
あまりにも多くのものを失いながら、ここに至ったブランチが
現実逃避したくなる気持ちもわからなくはない。
だから割り切れぬ思いが読み手の心に残るんじゃないでしょうか。
現在は小田島雄志さんの訳となっているようですが、
私の読んだものは田島博さんと山下修さんの共訳で
漢字がとにかく難しかった・・・。
小田島訳でいずれ再読してみたい。
欲望という名の電車 (新潮文庫)/T.ウィリアムズ

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