私のこの世で一番好きな小説です。
ストーリー然り、構成然り・・・とにかく良く出来ていて
単行本で2段組みという、わりと読みでのある本ながら
いつも一気に読んでしまいます。
このところ続けて読んだ文章が、どれもなんとなく物足りず
ついつい不平ばかりだったので、たまには私の好きな本を
取り上げて、良いことを書いてみようと思ったのでした。
そうでなくても年に最低2回は読んでいるのですが。
実業家・富公路君子が事故で亡くなる。
事故か他殺か、あるいは自殺かもわからない謎の死。
生前から世を騒がせていた君子について、
ひとりのインタビュアーが、彼女と関わりのあった
27人を訪ねて話を聞いていきます。
ある人にとっての君子は聖女であり、ある人にとっては
悪魔・・・見解は全く一致しません。
さて、君子の死因は?君子の人間性は?
ミステリータッチの面白さで、この本手放せなくなりますよ~!
インタビュアーの客観的な見解が書かれることもなく、
各章を構成するのは、インタビューされている人間の
ひとり語りのみです。全章通してひとり語りだけ!
老若男女の語る言葉の書き分けの素晴らしさ、
そして女性陣の使う言葉の美しさ、中でも主人公の
君子が使う言葉はうっとりするような日本語です。
彼女の口癖の「まああ・・」とか「愛ですわ、夢ですわ」
という言葉は私は大好きで、普段でも結構使っちゃう。
1978年に単行本発売だそうですから、この小説と
私の付き合いも長い長い長~いものになります。
残念ながら君子的なものは、ちーとも身については
おりませんが・・・。
自分に愛情注いでくれた人には、誠心誠意を込めて
その何倍もの愛情を与えている。
そうでない人、あるいは私の印象では自力でなく
タナボタ式に地位や名声を手に入れた人には
手厳しい仕打ちをしているように思えました。
とにかく半端じゃないゴージャスぶりが気持ちいい。
彼女が悪女かどうかなんて、考える必要もないと思う。
マーフィーの法則をはじめとした、ポジティブシンキングの
極意を体現したわけですよねえ。
潜在意識ってのは、良い悪いは認識しないそうですから
彼女がこうありたい、こうなる、と決めたとおりに
なっていっただけのこと。
強靭な意志と努力に脱帽です。
ひどい目にあった方にはお気の毒だけど、まあ小説だし、
そしてたとえ小説であってもこんな女性と関わりを持つことで、
平凡ではなくなった自分の人生、なんてドラマチック!と
味わってみるのもいいんじゃないかな~なあんて思っています。
でも考えてみると、ひどい目にあわせてくれた!と、
彼女を憎んでいるのは、男性に限って言うなら、
多分ふたりだけじゃないかな。
元夫と、実の息子・・・という皮肉さだけど。
精神的にかなり危ないところも見えますし、
幸せだと心から満足していたかは疑問ですが
少なくともいつも「こうありたい」という目標のある
充実した人生ではあったことでしょう。
こんな感じでとにかく、とてもドラマチックな作品です。
年表&相関図まで作ってしまうほど好きでした。
朝日新聞の連載小説でしたが、テレビドラマにも
なっていてそれも何回か見ました。
そのドラマが元々はこの本読むきっかけだったのですが
本当に小説もドラマも面白かったな。
この本をお好きな方、誰もがおっしゃっているように
私もこれは再放送、もしくは新たに映像化して頂きたい
作品だと思っています。
有吉作品は、それほどの数を読んだことはありませんし
彼女そのものもいくつかの言動を見て、決して好意を
持っているわけではありませんが、作家としては
認めざるを得ません。素晴らしいですよ~♫
ぜひ秋の夜長のお共に。
悪女について (1978年)/有吉 佐和子

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