読み始めてすぐ頭に浮かんでくるのは、
映画「真夜中のカウボーイ」です。
読むうちにそれが「エデンの東」にかわっていく。
・・・・というのは自分のイメージだと思っていたけれど
第2巻の巻末で中島梓と吉田秋生が対談しており、
そこで作品のベースになっているのが「真夜中の
カウボーイ」と「傷だらけの天使」なのだと
吉田秋生自身が語っていました。
第3巻の作品中に「エデンの東みたいだな」なんて
セリフが出てくるし、旧約聖書の創世記についても
触れている。
・・・ここ数年読んでいなかったけれど、
この対談が私の記憶に残っていたんだろうか?
いやいや・・・アメリカンニューシネマをお好きな方が
この作品を読んだら誰でもまず「真夜中の・・・」が
浮かぶことでしょう、やはり。
吉田秋生は名前や絵柄から判別しがたいですが
女性ですし、これを書いたのは若干20才です。
にもかかわらず男性の鑑賞にも耐えうる
かなりハードなお話を描いています。
兄弟間、親子間の葛藤や断絶、離婚、失業、
妊娠と中絶、ドラッグ、暴力と殺人などなど
強烈な事件が次々と展開されていきます。
一般的なイメージの明るいカリフォルニアは
どこにもなく、しかも舞台はあくまでもニューヨーク。
当初はセリフにも力みのようなぎこちなさを
かなり感じましたが、連載が進むにつれて
次第に違和感がなくなっていき、吉田秋生が
力を付けていくのを目の当たりにするようでした。
読み手が物語にのめり込んだり、
表現に慣れたりということもあるかもしれないけど、
やはりそれだけじゃない。
印象に残るシーンやお話は多々ありますが、
このところ兄弟(双子が主)の話を続けて読んで
来たせいか、兄弟の葛藤がまず気になりました。
作品中でも対談でも言及されているように、
「エデンの東」、さらにそのベースとなった
旧約聖書のカインとアベルのお話しそのものでした。
程度は違っても、誰でも自分と誰かとの
優劣を比べることはあります。
その一番身近で、そして多くの場合、
最初の比較相手が兄弟なのですね、きっと。
自分自身でも比較し、家族からも比較される。
そこで一度生まれたコンプレックスは、
他人との間のものよりもずっと強いかもしれないし
克服するのも大変そう。
でも「兄弟」を描くということは
実は単にひとつのサンプルを描いたにすぎず、
結局、人間関係の基本はここにあるということ
なのかもしれないなと思いました。
誰もが、良かれと思って行動していても
受け入れられるとは限らない。
こじれたものは、なかなか戻せないけれども、
複雑なものに出会ったら、物理的にも精神的にも
距離を置いたほうが良さそうですね。
意外にも同じ想いでいるかもしれないのに
なぜだかそれがわかりあえなかったり、
その機会がなかったり、時間がかかったり・・・
生きるって本当に大変です・・・。
今回は、またまた抽象的で感想になっていないケド
そんなことを思いました。
絵柄は私のやや苦手な「吉祥天女」の表現(絵)に
微妙にかかるような感じでしょうか。
のちのクールな絵柄を彷彿とさせる部分もあるけれど
まだすこ~しもったりとした感じが残ります。
ま、でも女々しくないですよね!作品も絵も。
吉田作品通していつも感じているけど、
男の子たちの目付きの悪いこと、怖いこと・・・
氷のような視線はかなり多いですね。
でも私は結構好きだけど。
後半はこの曲がBGMになっていた。
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