宮沢賢治の童話の中でも「花」についてかかれたものだけを集めたものです。
挿絵はいわさきちひろさんで、装丁が安野光雅さんという私の好きな方が
3人も寄り集まった作品集です。買わないわけがない・・・。
初期の頃の作品のようで、解説によるとその後のどの作品のベースとなったなどと
きちんとかかれていましたが、しばらく読んでいなかったので忘れてしまった。
短編6編に詩が1編で、短いけれども楽しく読みました。
最初の「まなづるとダァリヤ」は、どことなく星の王子さまのバラを思わせる。
わがままで自己顕示欲が強く実際に美しいけれども、なんだか哀しい姿です。
最後の「いちょうの実」。これは私が一番気に入った作品。
いちょうの実が、いよいよ明日世界へ飛び立つ・・・という前日に
兄弟姉妹が交わす言葉のあれこれ、母親であるいちょうの木に対する愛情など
なんともいえずにあたたかくてよいのです。
そして、私が既に人間としていちょうの実の行く末をある程度知ってもいるだけに
なんとなくこれも哀しみが漂ったりもします。
アンデルセンのお話にさやから飛び立つえんどうまめのお話がありましたが
とてもよく似ていました。
あれも好きな作品だったな・・・なんて思い出し、今度実家に帰ったら
読んでこようと思いました。
でもアンデルセンは同じ作品中でその後の豆の人生・・・豆生?・・・までも
描いていましたが、賢治は本当に前夜のわずかな時間だけのことだけを描いています。
それだけのことなのに、こんな素敵な物語ができてしまうんですねえ。
どの作品にも共通するのは、色の描写の美しいこと。
とにかく、未読の方は一度で良いから読んでみてください。
色の描写、それから自然の描写の美しさ、そしてその描写に使われる
言葉自体の美しさも感動とともに楽しんでいただけると思います。
花の童話集 (フォア文庫)/宮沢 賢治
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