同じくケストナー作の「点子ちゃんとアントン」を読んでみました。
素っ頓狂なお嬢様の点子ちゃんと、貧しいけど誇り高く生きるアントンの
友情物語です。点子ちゃんもいいけど、アントンが実にいいです。
点子ちゃんはお金持ちだけれど、両親は多忙で殆どかまってもらえない。
その寂しさを紛らわすため、トットちゃん的とも言えそうな行動を
あえてとってしまうこともあったのかもしれないな、とふと思いました。
まあ、真正お嬢様はわりとそういう面を持っていたりすることもあるかもですが
自分を顧みてもらえない子供が、自我を表現する方法は本当に色々あるのですね。
子供向けの短いお話ですが、大人は大人なりに読むことのできるお話です。
生活のため働いたり、家事をこなす子供。
その子供が自分の誕生日を覚えていなかったと言ってすねる母親。
恋人のお金を巻き上げ、さらに悪事をそそのかす男。
育児を人任せにして、子供を顧みない大人。
教え子の生活状況も知ることなく、授業態度だけで判断する教師。
誇りのため、教師に自分の苦労を話せない子供。
ある子供の秘密を握って、その親をゆする子供。
本人の責任ではないのに、存在する優劣、不平等。
・・・やはりここにも「飛ぶ教室」と同様、現代に通じる事情や
人間模様がたくさんあります。
挿絵も良いし、各章末ごとの「立ち止まって考えたこと」という注釈的
コメントもとてもよかった。
これは、ケストナー自身がストーリーとは全く別にそのエピソードに
ついての個人的見解を書いたものですが、なかなかに考えさせられる
ものでした。
大人になった今読んだ私には、実は正直こちらの方が本文より
ぐっと来るものがありました。
でも子供は、あの部分どう読むのでしょうね?知りたいなあ。
一見良さげに見える、登場人物の行動も、ここで諌められたりも
していました。その判断基準はなかなか難しく、物事は俯瞰的に
見ないといかんのね~と思わずには居られませんでした。
最終章近くの「尊敬について」は今の時代には一読の価値ありかと。
多少理不尽なことがあっても、親を愛し敬う心が常にあったこの時代、
そして小さな子供ですら持っていた「誇り」・・・やはりとても
いいですね、ケストナー・スピリッツ・・・。
ただ、これを私が相応の子どものころに読んで共感できたかな、と言うと
ちょっと疑問があったりします。
その理由は、こういうまっすぐさを持った子供たちが、自分を含め
周りにいたかどうかを思いだせない・・という情けない事情によるのですが。
私自身はこんな立派なというか、筋の通った子供じゃなかったと思うし、
周りももっと、自分勝手に生きていたように思うのですね。
だからこそ、高度な感性と理解力を持つ子供だった方々が、この正しく
美しい世界に惹かれたのではないかという気がしますねえ。
やはり、人間読むべき時に読まないと、それは後になってからでは
どうにも取り返しがつかないんだな~と思います。
私が子供時代に共感できたかどうかなんて、いくら今の私が考えたって
答えなんて出せないのですから。
本当にもったいなかったな~と思います。
尚、日本語訳については、ややカジュアルな感じがして(特に前書きや
子供のセリフなど)私の好みとは若干異なるかな。
時代やドイツ人気質を考えても、やはり先日の講談社版「飛ぶ教室」の
ような「です、ます」調の方が、堅苦しいようでも相手を敬う心が
感じられて私は好きだなと思います。
ただ、翻訳者・池田香代子さんの後書きはとてもよかったですし、
子供らしい元気なイメージの訳がお好きなにはとても良いと思います。
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今回は、久々の感想文で、どうも思うように書けませんでした。
なかなかまとまらない・・・やはり何事も継続することは、
とても意味があるんだな~と思うのでした。
ところで児童文学には、今も当時も印象的なタイトルの作品は
たくさんありましたね。
「エーミールと3人のふたご」・・・これもケストナーだそうですが、
3人のふたごって・・・・意味がわからなかったなあ。
「宿題ひきうけ株式会社」・・・最近、授業参観の際に
子供の教室の図書で久々に見かけました。
このタイトルはかなり強烈なものでしたねえ。
「名探偵カッレくん」・・・なぜ「ッ」と、小さくなるのか。
日本語ではちょっと考えられない名前なのでやはり印象的でした。
で、この「点子ちゃん」です。
ものすごくものすごく、変だタイトルだな~と思っていました。
だって、外国の作品なのに「点子ちゃん」って、何?
子供心に、どうにもそれが気に入らなかったのですね。
なのでついに今日まで手に取ることなく過ごしてしまったのでした。
まあなぜ点子ちゃんなのかは、ご興味あればWIKIPEDIAなどで
ご覧くださいね~♪
点子ちゃんとアントン (岩波少年文庫)/エーリヒ ケストナー

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