萩尾センセーにしては珍しい、ほぼ全編がラブコメという1冊です。
表題作「この娘うります!」は、ジュニア服のデザイナーである父親(34歳!)と
二人暮しの15歳のフランス娘で、純粋無垢な箱入り娘のドミが主人公。
15歳の誕生日に、悪友たちがドミのねんねぶりを見かねて、ドミにとってはかなり
刺激的なプレゼントを贈ります。
それがきっかけで彼女はモデルにスカウトされ、映画に出たり、恋愛したり・・・。
多少は恋に悩むけど、ドミがこの作品で経験することはまるで夢のよう。
そういう意味で、なんとなく読後は元気になってすっきりしてしまうのは毎度のこと。
これもまた隠れた名作のひとつだと思います。
何度か私が書いてきた萩尾作品での普通の女の子の描かれ方もこの作品では
全く気にならず。清純で純情なドミは本当にカワユイです。
寒い冬の日、焼き栗を寒空の下の屋台の店で買って食べたり、雪の中を被写体となって
動き回ったり、そしてポンヌフ(橋の名)から、川を走る船をめがけて飛び降りる
シーンなどは古き良きヨーロッパの青春映画・・・それもミュージカル映画・・・を
見るようでした。
萩尾センセー自体は自分の持ち味とは異なるものを描くことでかなり苦労されたと
聞いていますが、当時の年齢の勢いも手伝ったのか、セリフや画面の流れなどに
リズム感スピード感と若さがあふれるいい作品だったと思います。
同時収録は
3月ウサギが集団で
キャベツ畑の遺産相続人
ハワードさんの新聞広告
ママレードちゃん
ミーア
・・・文庫版にはど、作品の発表時期が記載されていないのですね。
これはもったいないこと。もう一息、編集の方には骨折って頂きたいものだと思います。
とはいえ、かなり初期の作品ばかりなのは確か。
「3月ウサギ」も大好きな作品ですし、他のも若さあふれる、そしてセリフの
はしばしに才能を感じさせるものばかりです。
それから文庫本の表紙は、ぜひ最新の書き下ろしではなく
当時のものを使っていただきたいと切に思います。すごい違和感なの。
ママレードちゃん・・・これから確認しますが、元々のタイトルは
「ママレード・ジョー」ではありませんでしたっけ?
今、古くから持っている本が見当たらないので、確認次第追記します。
この娘(こ)うります! (白泉社文庫)/萩尾 望都

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本日のBGM。
女性ミュージシャンは中島みゆき様以外は、どうも食指の動かない私ですが
家にあったので聞いてみました。
やはり慣れないけど、繰り返し聞いたら好きになれそうな気もする。
でも最初にが~ん!と来るようなインパクトは感じなかったのが正直なところ。
愚鈍だから?スミマセン・・・。
STAR/中島美嘉

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