私はこういう有名どころの方のものを本当に読んでいないんですよね・・・
これも私にとっての初・宇野千代さんでした。
生い立ちから、最初の結婚、作家やそれ以外の仕事のこと、そして数々の
恋愛遍歴を率直に語られています。
面白くて、もう一気に読んでしまいました。は~、満足!いいお話でした。
投稿した原稿が入選したかどうかが気になって、札幌から2日間だけの約束で
東京の出版社まで行き第1席であったことを知る。
そしてその時2位だった尾崎士郎と知り合ってそのまま東京で同棲を始めてしまい
以後夫とは一度も会っていないとか。
本当に直情的な人生には、驚きの連続です。
そんなことを繰り返して来ても、彼女はどの元・夫、元・恋人からも恨まれることもなく
彼女自身も恨みがない。また、元・夫たちがその後手に入れた妻や子供たちとも
交流があったりすると言う、一般的には不可思議なことが彼女の周りではいつも
当然だったように見える。
打算もなく全力でやってきていることが、どちらにもわかるからでしょうね。
どちらも深追いもしないし、逆に奪い取ろうとすることもなく、実に淡々としている。
元・夫あるいは恋人が心を移してしまった女性も皆、そういう方だったように見えます。
タイプの似た人が寄り集まると言うことなのでしょうか?
でもこれは私にはよくわかるなあ~。心が移ってしまった人にこだわっても仕方ないと
言うのが私の考えなので・・・歌やドラマに出てくるような、3人模様の絶体絶命♪みたいな
修羅場なんて大嫌い。
ダメなものに未練を残さず、目線を変えていく様は見事だと思うし、大変共感しました。
生まれは大きな造り酒屋のお嬢様ですが、明治女の多くが経験してきた苦労に加えて
宇野千代自らが選んだともいえる苦労も、これでもかと言うくらい彼女には訪れてはいます。
ですがそれらについて、まったく客観的に語っていてまるで人ごとのよう。
結局、幸せも不幸せも自分次第ということなんですよね。
私の好きなタイプの「潔さ」と「美学」を持つ大変心惹かれる人でした。
文庫版の後書きは没年となった平成8年、作者98歳の時のものです。
特別なことが書いてあったわけではありませんが、そこはかとない感動が
押し寄せてきて涙が止まらなくなってしまった。
この人生を納得できるものにするもしないも、自分次第ということと、
慣れ合いの人生なんて、やはりいかんのよねとつくづく思ったのでした。
生きて行く私 (角川文庫)/宇野 千代

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