「放課後の音符」 | MARIA MANIATICA

MARIA MANIATICA

ASI ES LA VIDA.

「音符」と書いて「キイノート」と読ませる、山田詠美の短編集です。

17歳の、特定の名前を持たない(素直な)女の子が、自分の身近にいる
素敵で、ちょっと大人な友人の恋の体験を聞きつつ、心情を語る形を
とっていますが、私の好きな「ぼくは勉強ができない」の女の子版というか
あの作品の原型となったような気がします。
「RED ZONE」なんて多分そうだと思う。

17歳なんて長男と同じ年で、もはや私にははるか遠いお年頃ではあります。
でも最初に読んだ15,6年前よりもさらに感じるものがありましたね。
それは生き方のスタイルとして見ている部分が大きいのだと思います。

それでも耳と口の不自由な男の子との交流を描いた「CRYSTAL SILENCE」なんて
あまりの表現の美しさに、鼻の奥がツーンとなるあの感じが度々ありました。
ドラマみたいに映像があるわけじゃないのに、文字だけでこう感じさせる
彼女の筆力は、やはり他の作家方とはずいぶん違うと思うなあ。

空の青さとか、木々の緑とか、そういう目で見えるものの美しさを、
素敵な言葉で表現できる作家はほかにもたくさんいるけど、この心を
表現する力はもうワタクシ的には他の追随を許さない、と言う気がします。

出て来る女の子たちは、山田詠美が好んで描く独立独歩型の子たちで、
私もとても好きなタイプばかりなのですが、それは決してわかりやすい
ものではなく「わかる人にはわかる」っていうものなんですね。
「陰翳礼讃」を読んだのは彼女のお勧めだったというのが本当のところですが、
僭越ながらちゃんと活きていると感じますし、あれを読んだ時に連想した
「風姿花伝」の「秘すれば花なり」にも通じる奥ゆかしさもやはり感じます。

わかりやすいものとか、誰もがいいというものに、ついつい疑問を持ってしまう
私にはこの感覚はかなりのツボなのでした。

・・・でも、割とこういう女性が私の周りにはいるなあという気がしてはいます。
むしろ、振られた仲間の代わりに集団で男の子に抗議したり、その場にいない女の子の
悪口を言ったり、なんでもお揃いでないと気が済まない(逆に言うと抜け駆けは許さない)
・・・そういう女の子軍団を実は私は高校以降、女性ばかり、あるいは女性が圧倒的に
多い場所で過ごしたにも関わらず、ほとんど見たことがないように思ってきました。

だから「女子校のノリ」なんて一言で片づけられると、ずいぶん失礼な言葉だわと
カチンときていたのですが、どうやらこの年になって、そういう女の人たちも
この世にはかなり生息していたのかもしれないな~と思うようになりました。
今まではお互い、相容れないものを察知して近づかないという、賢明な選択を
知らず知らずのうちにしていたのかもしれないですねえ。
ワタクシ的には幸いなことだと思います。

10数年前にこれを初めて読んだ時、それよりもっと前に読んだ「ベッドタイム
アイズ」とか「ソウルミュージックラバーズオンリー」で持っていた苦手意識を
一気に吹き飛ばした作品です。
17歳が主人公と言うことで、違和感持つ方もあるとは思いますけど、
そんな風に数字で表せるものなんて何の意味も持たないと、やはり私は思うのでした。

かなりの中毒患者になってしまった・・・が、この中毒性をわかる方と
語り合いたいな~、と思う今日この頃であります。


放課後の音符(キイノート)/山田 詠美

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こちらもパラパラと・・見?終えました。実は以前は定期購読していた愛読書で~す♪
おサレだけど簡単な料理がいっぱいで、結構好きな雑誌です。

Elle a table (エル・ア・ターブル) 2011年 05月号 [雑誌]/著者不明

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