萩尾漫画はSFイメージが強いけど、これはバレエ漫画です。
「フィジカル85」と言う作品の中で、彼女の好きな舞台、バレエ、ダンス、映画、音楽を
紹介しながらその中での肉体の美しさを解説していらしたこともありました。
(甲斐バンドのライブについても言及されている。)
バレエには特に造詣の深い方でもあるのです。
主人公は高校生のバレエ好きな女の子。
連れ子あり同士で再婚したある夫婦がいて、主人公の彼女は父親の連れ子。
で、その妻(つまり主人公の義母)はイギリス人と過去に結婚していて、だから義兄はハーフ。
で、彼女は義兄を頼って、イギリスでの短期のバレエキャンプに出かけていきます。
なんと、義母の元・夫と、義兄(つまり彼らは親子)がひとりのイギリス人女性を
争っていると、とんでもない状況に遭遇してしまうという設定なんだけど、
このあたりその争いぶりが、イギリス人側・日本人側それぞれをさもありなん、
という形で描いていて面白いな~、と。
萩尾センセーが海外を舞台に、あるいは読者の馴染みのない世界を描くとき、
いつも何気ないエピソードの中に、初心者でもついていけるような解説的なシーンや
セリフが必ずあります。
それは見過ごしてしまうようなものであることが多いけど、却ってこれ見よがしでなくて良いのです。
バレエ自体に関しても、こういう表現、こういうレッスン、それを見る側はどのように
見たらよいのか・・・なんてちょっとした指南書的にも使えそうな気がする。
この作品とは無関係なのですが「トーマの心臓」の中にも、ベートーベンやヘッセについて
学生の言葉を通して、萩尾流解釈が書かれていたことがあって、それが実に的を得ていました。
今すぐその本が見つからないので、正しいセリフは書けませんが、およそ一般的な
ふたりの偉人たちへの評価とは遠く離れた、けれども、自分流の解釈ができていなければ
書けないセリフで、私は初めて読んだ時に作品自体よりもまずそこにほれ込んだのでした。
作中人物の言葉を借りての、自己表現ともいえるかな・・・。
こういった感じの試みは萩尾作品のあちこちでなされているように思います。
私もそういう文章を書いてみたいと思いますね。一粒ですべてを表現できるような感じで。
本はいつも、次のヒントを与えてくれたり、また新たな興味の対象を与えてくれますが、
私には萩尾作品もまた同様・・・というより何よりも触発度NO.1かなと思います。
男女間の恋愛ものはほとんど描かないし、まれに描いても正直あまり面白くない・・・・。
少年漫画の恋愛ものに出て来る女の子の多くに、昔から私は感情移入したり共感を
覚えることが少ないのですが、多分それは男性目線で描かれているから。
そして彼女の恋愛ものはそれに似た印象をいつも私に残します。
前にも書いたけど、彼女はやはり女性目線を持っていないんじゃないかな~。
中身男性・・・それも、男っぽい女性なのではなく、本当に男心なんじゃないかと
思うことがしばしばありますね・・・。
バレエと言えば・・・16歳の哲也様~♪
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