黒冷水 | MARIA MANIATICA

MARIA MANIATICA

ASI ES LA VIDA.

家庭内ストーカーのお話。怖いです。


昨夜、娘に「何か面白い本ないかな~?」と聞いたら、

いくつか彼女のお気に入りの小説のあらすじを話してくれた。


で、これは一寸面白いかも、と思って今朝受け取りました。

2,3ページ読んだところで、まずい!引き込まれる~と感じて

一旦、本を閉じて、ザーッと家事を片付けて1時間強で読みました。

もともと速読ということもあるけど、読みやすいし、内容が大変に

興味深いので、すらすら読めます。


実の弟が、兄の部屋を、引き出しをあさる・・・・それに気づいた兄が

様々な罠を仕掛ける・・・これがまた執拗でまさに変態的。

二人の会話は日常的にはほとんど無く、ただただ、あるときは兄の目線、

あるときは弟の目線で、相手に対する憎悪が語られる。

会話がないのに、それぞれの脳内で作り上げられた相手のイメージと

そのイメージに対して行われる、現実の攻防。


あいつはあんなふうに思っているに違いない・・・だったら俺は

こうしてやる、と様々な策を練る兄。

その兄の策に見事に引っかかっては、またその兄がそうするにいたった

経緯をやはり同じく脳内で想像し、兄の施した罠を超えようと執拗に

ストーカー行為を繰り返す弟。

どんどんエスカレートしていくのに、相変わらず二人には会話が無いまま。

相当に気持ち悪いです。


後半、あああ、なんだ~こんなオチで終わっちゃうわけ~?とちょっと

がっかりしかけたところに、まだまだ2段目のオチが隠されているという具合。


読後感は、やっぱり気持ち悪い、かな

途中吐き気すら感じてしまいました。

家にあったから読んだけど、買って読んだら残念感がちょっとあったかも。

(1時間で読み終わる本に1365円?というケチな感覚も含め。)


でも久々に若い、新しい作品を読んだ感はある。

1985年生まれの若者の作品で第40回文芸賞受賞。

作者17歳の時の作品。

17歳でこんな作品を!という声が多いけど、いやいや、これは30歳や

40歳になってしまったらルポタージュとしてしか書けないでしょう~。


人物を知りたいと幾つかネットで調べたところ、3作目の「走ル」が

芥川賞候補になったそう。なるほどね~。


で、インタビュー記事にあったこの部分を興味深く読みました。


「もうひとつ興味があるのは、「地続き」ということです。

たとえば、「走ル」のひとつの重要な点は、主人公が

通学の延長でそのまま青森までいってしまうところにあります。

彼の旅は、あくまで日常の延長なんです。


これが飛行機や新幹線で移動してしまうと、日常でなくなってしまう。

一瞬で目的地について、一時的な、特別な経験として記憶に残る

だけです。


僕は、どこかに行くときは、その過程にこそ、意味があると思います。

だから、自転車も自宅から乗っていくのが好きです。

ここ数年のブームで自転車に乗り始めた人って、ウェアとマシンを買って

休日に電車で自転車を運んで、良い道だけ走るっていう人が多い。

でも、僕は自宅から行きます。」


現在24歳で会社員。若い若い!!

これからもっとたくさんの人や物を見たこの方が、この「地続き」感を

今後どんな風に、描いていくのかが楽しみです。


最近、読む本すべてが、何かこういった示唆を与えてくれる内容だったり

作者自身がそんなタイプだったりすることが多いような気がしていたけど、

もしかしたら私の現在の視点がそういう捉え方をしているだけなの

かもしれない。

もう少し、別の本も読んでみないとね~。


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