イメージ 1

 
メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲では、オーケストラの抜群な安定感のもと、バティアシュヴィリにとってこの上なく自分自身を表現することができる環境にある。バティアシュヴィリのヴァイオリンは堅実であるが、オーケストラのサウンドと綺麗に融けあっていないように感じる部分がある。これはおそらくマゼールに問題があると思われるが、ソリストのサウンドを無視し、完璧なオーケストレーションを行っている。熱気を帯びてきた第3楽章でバティアシュヴィリが追随する形で両者が結びつく。とは言え、主導はマゼールにあり、必死に喰らいついていく様子が目に浮かぶ。

 

後半の「英雄の生涯」でも堂々とした演奏を繰り広げる。抑揚のつけ方に作為的な部分を感じるが、重厚で直立不動なマゼールのスタイルは演奏を通して一貫されている。「戦い」のシーンでは、ミュートされた金管楽器が滑稽だ。感情や思い入れを廃したように感じられる演奏だが、時折垣間見られる情熱に心が揺さぶられる。シュトラウスの持つ音の美しさを極限まで追求し、一方でそれを見失わないように抑制された情熱、このぶつかり合いが十分に堪能できる演奏となっている。

 

メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲ホ短調op.64
R.シュトラウス:交響詩「英雄の生涯」op.40
指揮:ロリン・マゼール
ヴァイオリン:リサ・バティアシュヴィリ
バイエルン放送交響楽団

 

(2000年7月25日 Zwischen Donau und Altmuehl Sommer Konzerteドイツ・インゴルシュタット祝祭劇場でのライヴ、バイエルン放送局-AUDI自主制作盤 A-2000)