村上開新堂のクッキーを初めて知ったのは北村薫の街の灯だったと思います。昭和初期のお嬢様と専属運転手のベッキーさんの交流を描く作品。

その中で英子がベッキーさんにちょっとしたお礼に村上開新堂のクッキーを上げようと思いたつのですが、これが庶民にはどんなに手の届かないものなのか、英子は全く理解していないのです。

私も村上開新堂のクッキーか。。。食べたいな〜とか思うくらいで、読んだ当時は全く何もわかっていなかったのですが。

それからしばらくして村上開新堂をググり、お店の存在は確認しました。

ここが所謂いちげんさんお断りのお店だと知ったのは日本に帰る前に実際にクッキーをオーダーしておこうと思い立ったときです。

初めて注文する客用に村上開新堂のウェブで注文する際の流れが載っていますがそこに明確に既存顧客からの紹介が必要となっています。

そこで私は東京の知人友人に顧客を聞いてまわりましたが、聞いた当時は誰もおらず、購入を断念しました。

ところがその半年後に聞いた友人のお父様が顧客だったことが判明。購入できる道が開けました!

が、ここからがまた大変。

なぜならクッキーは3-4ヶ月待ち必須だったからです。

日本に行く数ヶ月前にはオーダーしていないと手に入らない状態。

日本から来る人がいるので村上開新堂のクッキー持って来てもらえると思っても、大抵間に合わないくらいなのです。

そんな困難を乗り越えて手に入れたクッキーは食べ始めは

うーん。。。そこまでするほどのもの?

と思いましたが、とにかく飽きないし、次々に手が出てしまいあっという間になくなってしまいました。

味は昔ながらのクッキーです。が上質な材料を使って作られたことがよくわかり、後味を引かず上品な味。全く飽きません。種類が多いのでその中で好き嫌いはありますが、丁寧に作られた逸品。1868年、明治初年から続いている名店の味です。

今では年末にみかんゼリー(一年に3回、12月にしか作らない)と一緒にオーダーするのが定番になりました。

村上薫の小説を読んでオーダーしようと思い立ってから実際手に入れるまで1年半はかかったと思います。それをさらりと英子のお嬢様ぶりに折り込む北村薫。。。さすがです。。。