新居に入ってすぐさま居場所を与えられた本について投稿した。
ガラスケースの写真の中にはもう一人の著者のテクストもあった
下から三段目にならぶオレンジ色の全集だ
ジークムント・フロイト
十九世紀から二十世紀にかけてウィーンとロンドンで暮らした医師
人の心の中の構造と機能を解き明かし
精神分析
という世界を拓いた思想家でもある
『夢判断』『モーセと一神教』『ヒステリー研究』『精神分析入門』
「快楽原則の彼岸」
一生の間にこれだけの言葉を書き残した医師も少ないだろう
***
ウィーンに行ったとき音楽好きの私がベートーベンハウスより先に探した家
それはフロイトの住居、かつフロイトが医師として開業していた家だった
通りの向こうからでもはっきり見える
FREUD
という看板を見た時
あまりに大きな文字にちょっと笑ってしまった
ナチの弾圧が迫った1939年
フロイトは難を逃れようとロンドンに渡る
ロンドン郊外ハムステッドという高級住宅街に居を定めたフロイトは
晩年の短い時間をそこで過ごした
精神分析治療に使われたカウチが展示されたフロイトハウス内部
人の心に自分でも知らない別の心があること
無意識とよばれる心の層を
初めてコトバとしてあばいた精神分析家
フロイトの仕事は百年近くたった今も
新しい解釈を生み続けている
私の研究者生活の後半は
フロイトのテクストを読み
フロイトについての議論を展開する
ジャック・ラカンやショシャナ・フェルマンといった思想家たち
の著作を読むことに費やされてきた