春めいてきた午後、山手の丘を散歩した
山手本通りをいつもと反対方面に歩く
道の反対側にカトリック山手教会
近代日本最初の教会だ
十代のころ
横浜に住むボーイフレンドと
クリスマスのミサに行ったことがある
さらに進んだ私の足は
ある門の前で止まった
私の別の人生が始まったかもしれない地点だ
***
1963年2月3日
フェリス女学院中学入試の日
願書を出してあった私は
入試を受けなかった
前日に青山学院中等部の発表があり
417番という受験番号を確認した12歳の私
自らの意思で青山学院へ入学することを決め
フェリス女学院の入試を受けず
その日は鎌倉の祖母の家に遊びに行った
あの日、この学校を受験し、この学校に入学していたら
私の人生は別の展開をしていたのだろうか?
***
あれから60年あまり
これまでたどってきた人生に満足している
しかし、あの日、この学校を受験して合格していたら
私の歴史はどんなヴァージョンで展開したのだろうか?
それとも今と同じところに行きついていたのだろうか?
人はだれでも
ある時点で
ある人生を選択して生きている
もう一つの人生を夢想するのは
私の終活が
豊かな証なのかもしれない