アリさんは午前11時ごろ来ると言っていた
ペルシャ絨毯をクリーニングに出すのだ
購入して18年
絨毯は生き物だと聞いている
そろそろきれいにしてあげたい
生き返ってこれから何十年何百年と使えるのがペルシャ絨毯だから
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アリさんとお会いしたのは2005年
吉祥寺で絨毯専門店カスピアンを開いている
カスピアンではイラン本国から仕入れたペルシャ絨毯をデパートより安く買える
とは言え、高額な品
代沢のマンション購入で大きなお金を動かした勢いで買えたものだ
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もうすぐアリさんがくるからその前に郵便物を取ってこよう
10時45分ごろマンションの一階へ降りていく
玄関まで来た時だった
オートロックのガラスドアの向こうで手を振っている人がいる
アリさんだ！
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お久しぶりです！
またお会いできて嬉しいです！
自然に行われたこの会話
後になって気づいて驚いた
彼はガラスの向こうの女性をなぜ私だとわかったのだろう？
約束の時間には早かったし、このマンションの住民はたくさんいる
なのに、アリさんは
昨日別れたばかりの知人のような笑顔で
私に手を振っていた
十八年たっても覚えてくれていて
とっさに私だと
アイデンティファイしてくれた
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クリーニングに出した絨毯が昨日もどってきた
生き返ったようなあざやかな色でもどってきた
新居がますます私の空間になっている
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アリさんと尽きない話をした
来日して40年近く
日本人の奥様との間に娘さん二人
日本国籍も取得した
日本での商売もイランでの商売も大きく広げているとのこと
ただ、3年前奥様が亡くなったとのこと
まだ50代
コロナワクチン接種の二週間後のことだった