2019年3月4日
その年度最後の教授会は私にとって所属大学で出席する最後の教授会だった。
私が勤務した大学では教員の定年は68歳。
会社や役所では、定年年齢の誕生日が退職の日になっている。
大学では学期の途中で教員が突然退職しては困るので、68歳の誕生日を迎えたその年度の3月末で退職することになる。
4月6日生まれの私は学年歴が始まったとたんに68歳になったのだが、そこから約一年後、翌年の3月31日に退職するというわけである。
最後の教授会では、毎年退職する教員が挨拶することになっている。
これまで退職なさった方たちは、ご自分の研究者としての思い出を語ったり、教授会のメンバーへの感謝を述べたりしていた。
私はなにを話そうか?
いろいろ考えていたのだが、いざその場になって出た言葉は何とも即物的で味気のないものだった。
長い教員生活でしたが、これで、嫌いな業務をしなくてもよいと思うと嬉しいです。
それは入試業務です。
夏前から始まる入試問題作成業務。何度も会議を重ね、問題を点検し、それでも2月の本番の日にはミスが発覚するのではないかと気を抜くこともできず試験時間中待機していた緊張感。
そして、何よりいやだったのは、試験監督という仕事。
朝早く集合し、試験用紙を持って受験生の待つ教室へ。答案を配り、説明文を読み上げて試験開始。
試験中の仕事としては欠席者数を数えてシートに書き込み、音をたてないように監督する。
終了後は答案の枚数を数え受験者数と一致することを確認。一枚でも多くても少なくても大ごとだ。
試験の間は教室を離れることはできない。
閉所恐怖症気味の私には長くてつらい時間だった。
こうした仕事からやっと解放されます。
自分の退職にあたって一番祝いたいことです。
みなさまお世話になりました。
***
話し終えて気が付いた。
しまった!
これからも入試業務をしていく同僚教員のことも考えず、自分の解放感だけを語ってしまった!!!
退職の挨拶としては教授会史上最低の挨拶だったと思う。
「S先生らしいな」
同僚たちは笑ってくれていたのかもしれない・・・
みなさん、二十数年にわたりおつきあいいただきありがとうございました。
1994年4月から2019年3月まで使っていた12号館5階の私の研究室。
本や荷物を撤去した後の写真。30㎡は結構広かった。
六人掛けのテーブルで大学院生たちとやったゼミの光景がよみがえる。