NY1日目:

夕食:アンクル・ジャック・ステーキハウス

飛行機嫌いということがあり13時間のフライトの果てにNYに着いたころにはげんなりとしていた

が、バスを軽く走らせアンクルジャックについた頃には興奮によりそんなことを忘れていた程度の

それだったことが判明。と、どうでもいいことは置いておかねば。。

宴の始まり。初めてのNY初めての店。いざなわれるままに始まるディナー

アメリカンなBeerで乾杯。来たぜNY、憧れのDABの都

フリーメイソンが会合していると妄想してしまうような妖艶な個室。

ほどなくしてギャルソン達が運ぶ前菜が我々の愉しむ宴の部屋へと運ばれてきた。

順々に各自にサーヴされ、そして私にも順番が回ってきた。

そして。!!! What’s???

私は驚愕した。

最初に提供された皿に乗って来たもの。

それはカニを使ったオーブン焼きクラブケイクだった。

なぜステーキを食べに来たのにカニなのかに?

正直にいうといささかガックリ心の肩を落としてしまったのは認めざるを得ない。

私は肉を食べるつもりだけでNYに来たのだったのだから。

聞けばどうやらNYのステーキハウスはこのクラブケイクから始まるのが定石のよう。

なるほど無知と勉強不足。。

と、まぁ、もともとが目の前のものは素直に受け付ける性質な私は

そのクラブケイクから漂う芳しい香りに口中に唾液がまん延している事に気づく。

身体は正直なのであるのである。

「こ、こいつぁちゃんと仕事してある“料理”だぜ」、と心の中で私は呟く

ツイッターにも即ツイーとをしていたようだ(興奮から無我の境地でツイートしていたらしい)

肉厚のカニのほぐし身をパン粉と卵白で纏め上げセルクル詰めして焼いてあるのだろうか、

極めてシンプルにカニという食材を味わえる。


そして皿に敷かれたエロチックさと無縁な大雑把な(いや、おおらかと書いておこう)

舌の記憶に残るアメリケーヌソースも身構えるでもなく、人懐っこく口中を楽しくさせてくれる。

私はこのおおらかな料理の感覚におおいに胸が熱くなった。

そこからは楽しい記憶しかない。

大盛りにもほどがあるレタスとトマトのサラダ。

先程のクラブケイクの余韻をこざっぱりと消しDABステーキへのプレリュードも兼ねる。

ステーキの焼きあがりを待つ歓談の合間に今回の視察旅行の同行者たちの自己紹介などもしていたが

それをきちんと把握しながら覚えられるほど理性的な脳と胃袋ではなかったので

その時の記憶は底の抜けた牛乳瓶のように記憶の底に残っていない。ごめんなさい。

と、ほどなくして室内に運ばれてきたポーターハウスステーキ。

個室全体に広がる甘い焼きトウモロコシのような香ばしい香り。

歓喜の声がそこかしこからあがり、みな一様に写真にと納めていく。

一眼レフを持つやまけんさんの自慢のフォトショットも敢然と冴えわたる。

後日ビデオに録画したその光景を見返してみたが、皆まるでハイエナのそれのようだった(笑

さて、各自テーブルにもどり目の前にポーターハウスが置かれていく。

焼き加減は2種類。

ブラック&ブルー(以後B&B)と呼ばれる骨付き牛のタタキ仕立て、と、ミディアムレア。

私はこのB&Bという焼き方を初めて目にした。なのでこちらにスポットをあてて書く。

このB&Bというものは驚くことに表面が真っ黒焦げに焦げていた。

日本でこの皿が提供されたら次の日に食べログサイトに苦言が載ること間違いないだろう。

しかし私は驚かなかった。なぜならサーヴしたギャルソンの顔色に違和感がなかったからだ。

これはこれでいいのだ、きっとこういう調理法なのだと私は推測をした。

そして私はおもむろにその厚さ5cmにカットされた一切れを口に入れる。

すべては一瞬に始まって一瞬に終わる。そんな印象をうけた。

わかりづらい表現をしていることは分かっていてもその時のひと口はThat’ Allであったのだ。

いま思い返せばいろいろと考察は出来る。

あらかじめソミュールなどによって味付けしたDAB。

グリルと天板とで丹念に焦げ色をつけた表面の焼き加減。

と、ねとりとした生肉特有の歯にまとわりつく質感。

それらが相まって醸し出す複雑な香りと食感のハーモニー。

オーケストラのようではない極めて即興のJAZZYのような演出。

私は理解をした。  なるほど、これがステーキなのだ。と。