『ジャングル黒べえ』通史 | 日本語あれこれ研究室

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 アニメ「ジャングル黒べえ」のDVDボックスが発売されるとな。何という画期的な出来事であろうか。時代がようやくマトモだった頃に戻ったという気がする。

 

 1973年にアニメと、藤子・F・不二雄の連載マンガが同時に発表された。後になってマンガが初めて単行本化されたのは1988年、中央公論社の『藤子不二雄ランド』(全301巻)の中で全1巻で刊行された。しかし翌89年に例の「黒人差別をなくす会」から、『オバケのQ太郎』(の中の「国際オバケ連合」の回)に対して黒人差別だという抗議がなされ、小学館も中央公論社もオバQのこの巻を絶版扱いにしたのである。

 この絶版に際して中央公論社は、直接抗議を受けていない『ジャングル黒ベえ』もついでに?自主回収したと言われている(黒べえはアフリカのピリミー族の酋長の息子)。

 ※「黒人差別をなくす会」について詳しくはこのブログで先日「堺市の一家の話」として掲載した。

 

 この数年前に、講談社の『手塚治虫漫画全集』が全300巻で完結していた。『藤子不二雄ランド』も第1期と称して全300巻の予定だったが、最終的に301巻まで出たのは、『ジャングル黒べえ』が無かったことになったがそれでも全300冊にするためだったのだろうと、おれらは仲間内で臆測していた。巻数で手塚全集と並びはするが、師匠を追い抜くことはしないという敬意ではないかと。

 

 その後、1999年に出版された『東京ムービー アニメ大全史』でも『ジャングル黒ベえ』は作品紹介自体が掲載されなかった。おれ自身がゼロ年代の後半にムービー(トムス)で仕事をしたときには社屋のエントランスのモニターでムービーの歴代テレビアニメのオープニングがエンドレスで流れていたが、その中にも『ジャングル黒べえ』だけがなかった。

 しかし2009年から小学館で刊行が始まった『藤子・F・不二雄大全集』から、大きく風向きが変わった。この全集は初めから『ジャングル黒べえ』も刊行予定に入っていたし、「国際オバケ連合」もきちんと収録された。

 そして、今回のDVDボックスの発売となったのである。また、今年発売された『トムス・エンタテインメントTV主題歌大全集』のDVDにもオープニング・エンディングが収録されているそうだ。

ほんとうに、ようやく「元に戻った」という感慨がある。つくづく、あの時代のヒステリックな騒ぎはいったい何だったんだろう、と思う。

 

※追記1

 『ジャングル黒べえ』のアニメ企画は初め宮崎駿氏がキャラデザインをしたと言われており、その際の仮題は「暴れボロンチョ」だったという噂も聞く。詳しい人、教えを求む。

※追記2

 『手塚治虫漫画全集』は1993年から追加の刊行が始まり全400巻になった。これで手塚先生があの世でにんまりしたのも束の間、2006年から始まった『石ノ森章太郎萬画大全集』が全500巻を達成した。手塚先生がまた苦虫を噛み潰している。

※追記3

『ジャングル黒べえ』、アニメの音響監督は故・千葉耕一さんだったんだね。おれが最も敬愛していた、カッコいい音響監督。元々は声優なので、こんなに昔から録音の仕事もしていたことに少し驚きました。

 

 

 画像は、「F大全集」専用本棚のロールカーテンにいる黒べえたち。