数年前に大学生二人からインタビューを受けたことがある。以前にこのブログでもそのことを少しだけ書いた(2014・3「インタビュー用語の基礎知識」)。彼らは慶應義塾大学SF研究会のメンバーだったので、その会のHPを見ていたら面白い記述があった。おれの監督作『きまぐれオレンジ☆ロード あの日にかえりたい』を取り上げたページがあり、その中でこの作品は「原作レイプ、でも出来は良いアニメ」と評されている。
同様の「原作壊し映画」の参考資料として、『カリオストロの城』(宮崎駿)、『ビューティフル・ドリーマー』(押井守)、ワンピースの『オマツリ男爵と秘密の島』(細田守)も挙げられている。こんな錚々たるメンバーと並べてもらえるなんて、光栄というのか何というのか……。
さて、件の『あの日にかえりたい』は、確かに原作者の不興を買った作品である。不興なんてものではなく、呪詛されている可能性さえある。そのことを実感したのは、もう二十年ほど前のある出来事。
その頃は「フィルムコミック」というものが、まだけっこう流行っていた(現在は文春ジブリ文庫くらいか?)。当時は色々と出ていたものだ。
『あの日にかえりたい』も公開から数年経っていたがそれが企画され、作画監督だった後藤真砂子のところにカバーや口絵用の描き下ろし原画の依頼が来たのである。しばらくすると、カバーと口絵の印刷見本が届いた。その現物はまだ手元にあるが、「ジャンプコミックス・セレクション」として前編・後編の全2冊。定価は税抜き各670円となっている。
ところが数日後に、原作者の要望により印刷・発売が中止になったと連絡が来た。正直おれは驚いたね。当時もう原作者はジャンプで仕事をしていなかったし、編集部が出すと決めたものを中止させるほどの力があるということが実に意外だったのだ。
とにかくまあ、こうしてこれは幻の本になってしまったわけですね。
さらに8~9年前?にテレビシリーズとOVAとがDVDボックスとして発売された時にも『あの日』は収録されず、原作者の権力恐るべし、と改めて思い知らされたよ。
※但し、ヨーロッパ版のDVDが何種類か存在するらしい。また、数年前にある若いスタッフが『あの日』を観たいと思って探したら、新宿のTSUTAYAでまだVHSのレンタルをやっていたそうで、これにも驚いたものだった。
画像は「忍たま乱太郎」第1期のアフレコ台本。