十二指腸潰瘍の記・前編 | 日本語あれこれ研究室

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 ある友人と喫茶店で会ったら、そいつは「おれ十二指腸潰瘍にかかったんだ」と言って錠剤を飲んでいる。「消化の悪いものは食べるなと医者から言われた」とも言う。もう四半世紀も前の話である。おれはその時、十二指腸潰瘍がどんな病気なのかすら知らなかった。

 

 それから23年くらい経ったころ、おれはスタジオジブリで『海がきこえる』という作品の監督をすることになった。8月に高知市のロケハンをして、9月頃からスタジオに毎日入るようになった。いろいろな打ち合わせをしつつ毎日絵コンテを切っていたのだが、その絵コンテが半分くらいまで進んでいた1029日のこと……。

 早朝に起き出してトイレへ行こうとして、その途中で昏倒した。棒のように倒れたらしく、食堂のリノリウムの床に後頭部をしたたかぶつけて、しばらく気絶していた。意識を取り戻してやっとトイレへ行ったら、便の代わりに真っ黒な液体が大量に排泄された。

 またしばらく寝て、午後になってから妻に伴われ、自宅から歩いて数分のところにある内科クリニックへ行った。その途中でも脚がふわふわして数回しゃがんで休む。

 クリニックで症状を言うと、あっさりと十二指腸潰瘍と診断された。あの黒い便は「タール便」といって、潰瘍から大量に出血した血液が腸を通って排泄されたものだという。昏倒したのも歩けなかったのもつまりは極度の貧血のせいだったのだ。薬をもらい、翌日に胃カメラで検診することになる。

 

 翌日は何とか歩くことができた。胃カメラで検査したところかなり重症の十二指腸潰瘍で、貧血に対処するためその日から鉄剤の注射を打つことになる。その注射器がとても太くて長さも30センチくらいあって、まるでギャグマンガに出てくるような注射器なのであった。そこから茶色い薬剤をゆっくり長時間かけて注射されるのだ。さらに点滴も受ける。

 その後は毎日クリニックに通い、点滴と鉄剤の注射はしばらく続いた。十二指腸潰瘍に残っている血溜まりは再度の胃カメラで吸引してもらい、胃カメラの機能とは撮影だけではないのだということを知った。ちなみにこの時期の数日間はホットミルクくらいしか口にできなかった。

 十二指腸潰瘍はストレスから来る病気だそうで、おれの場合はジブリで監督をするプレッシャーとか、以前から担当していた他社の作品と作業が重なっていたのでその疲労とか、そういうのが多分あったのだろうと思われる。

 つづく

 

 

 画像はOVA「リカちゃん」と「暗黒神話」。

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