テレビで高校野球を見るともなしに見ていると、名前に「斗」が付く選手が割と多いことに気がついた。例えば、「彰斗・力斗・海斗・悠斗・健斗」などなど……。
もちろん、従来通り「~人」という字の「と」もいるのだが、やはり「~斗」が多いと感じる。おれの世代などには殆どなかった名付け文字なので、十数年前にけっこう流行ったということなのだろうか。そこで思い浮かぶのは、『北斗の拳』世代が親になってこの字を使ったのではないか、ということ。
何しろ、「斗」という漢字自体には「単位としての斗」「柄杓」「枡」などの意味しかないからだ。「泰斗」(権威者)なる言葉もあるが、これは北斗星、つまり柄杓星から来ている。
もう一つ、球児の名前にしばしば見かけると気づいた漢字は「汰」である。「淘汰」や「沙汰」の「汰」だ。他にはあまり使わない文字だと思う。
例えば「裕汰・壮汰・亮汰・建汰・晃汰」などなど……。従来なら、「た」の読みには「~太」が多かったが、なぜかサンズイ付きの「~汰」が流行っているようだ。こちらは理由の想像がつかない。
で、「汰」という漢字自体の意味は何なのだろうと思って漢和辞典を引いたところ、まず出ている語釈が「よなげる」である。
「よなげる」って何? 聞いたことも使ったこともない言葉だ。
広辞苑で詳しく調べる。①米を水に入れ、淘(ゆ)り磨ぐ。②細かいものなどを水に入れて淘り分ける。③選り分けて悪いものを捨てる。淘汰する。
つまり「よなげる」とは、川の中でざるを使って砂金を探すような動作ということらしい。
では「淘汰」の「淘」という字の意味は何なのか。漢和辞典によると、何とこれもまた「よなげる」なのであった。つまりダーウィンの提唱した自然淘汰の意味とは、「よなげてよなげる」ことだったのだ。
高校野球から話が大きく逸れたが、「よなげる」を知ったことが収穫であった。