愛しのS-Fマガジン(67) | 風景の音楽

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“のすたるジジイ”が30~50年代を中心にいいかげんなタワゴトを書いております。ノスタルジ万歳、好き勝手道を邁進します。


愛しのS-Fマガジン(67)

各号の目玉作品は次のとおり(「」は目次に付けられたキャッチコピー)。

1977年8月号ハミルトン追悼特集(第225号)
★マムルスの邪神 エドモンド・ハミルトン 「東アフリカの広大な砂漠の中 - 失われた古代都市の石柱に囲まれて遙か太古より時の深淵を超えてきたおぞましき血に飢えた神の神殿が…」
★衛星チタンの〈歌い鳥〉 エドモンド・ハミルトン 「箱形の体、レンズ眼、共振者 - 生きている脳=サイモン・ライトが久方ぶりで新しい身体を得ることになったが…おなじみキャプテン・フューチャー・シリーズ!」

1977年9月号 ネビュラ賞特集(第226号)
★ハングマンの帰還 ロジャー・ゼラズニイ 「人間の手によって作られたハングマンは人間に背いて大宇宙の深淵に消えていった。そして再びハングマンが地球に姿を現したとき人間の罪はひとつまたひとつと屍体を造るのだった」
★サンディエゴ・ライトフット・スー トム・リーミイ 「ローレル・キャニオンのささいな魔法はカンサスの田園より一人の少年を誘う。あやしげな男女の行き交う都会へと…そして魔女の家は緑の炎に燃えあがる」

1977年10月号 ヒューゴー賞特集(第227号)
★監視者 リチャード・カウパー 「環状列石のちょうど中央部に修道院はあった。そして内部には〈眼〉と呼ばれる石棺があり未来の記述〈予告書〉は書かれたのだった」
★太陽系辺境空域 ラリイ・ニーブン 「海王星軌道の外側、そこは太陽系の辺境空域。今、その空域に不可解な宇宙船消失が相次ぐ。自然現象、海賊、あるいは何物かの陰謀か」

どこからかアタシを古代の生き物が呼んでいるような気がしている。
はるか石炭紀からジュラ紀あたりの年代のことだ。
巨大な植物と巨大な生き物がゆたかな生命相を見せていた頃だ。
いつも夢に出てくるのはテラコッタ大地と大岩の間の洋々たる青い水。

その向こうに巨大な生物が居てアタシを呼んでいる。
夢の中で彼らは一切の姿を見せぬ。
だが、アタシはそのおどろおどろしき存在を捉えているのだ。
彼らの眷属たる車輪足の大男を一度だけ見たことがある。

巨大生物は謎だらけである。
石炭紀には巨大な植物が繁茂し、
地表を覆い尽くしていた。
二畳紀、三畳紀、ジュラ紀となると巨大生物が跋扈していた。

巨大な恐竜が死滅したのは隕石や噴火による
天変地異のせいだと言われている。
アタシは、絶滅した理由よりも、
なぜ巨大生物が居たのかを知りたい。

昆虫だってそうだ。
今どこを捜してみても1メートルを超えるトンボなど居ない。
海中なら鯨だろうが烏賊だろうが巨体を支えることが出来る。
だが、地上で馬鹿でかい恐竜の躰がどうして育ったのか。

現在、地上で一番大きな生物はアフリカ象だろうが、
ジュラ紀ではアフリカ象など赤子同然だ。
何十メートルもあるシダが生い茂り
馬鹿でかい昆虫や恐竜が飛び回る世界。

また、過去には身長五メートルを超える巨人族も居たようだ。
巨大生命体が躰を操れるのは
筋肉の発達よりも、重力そのものが低かったのだろうか。
ぶんぶんごまのように地球が高速自転していたのか。

だがそんなに高速回転していたら
地球は丸餅のように扁平だったはずだ。
現在でもたしかに赤道直下では体重は軽くなるが
一日が半分の十二時間くらいなら相当効果は出るかも知れぬ。

一日が今の四分の一の六時間ならば
赤道の重力はかなり低くなり、
逆に日照が増えて気温は高かったかも知れぬ。
記憶力薄れたアタシには重力の計算方法がもう
判らぬ。

ティラノサウルス・レックスは不細工である。
頭でっかちのくせに赤ん坊のような小さな両手。
あれじゃ殴り合いはもちろん、取っ組み合いすら出来ぬ。
尻尾でぶっ飛ばすか、がっぷり噛みつくかしかない。

草食系恐竜はのんびりゆったり構えてナカナカ良い。
肉食系は敏捷でなくてはならぬだろう。
アタシがガキの頃に買って貰った図鑑には
“このころは巨大な恐竜や巨大な植物でいっぱいでした”。

さいですか。
そんなことは絵を見りゃわかるじゃないか。
ガキの頃からアタシは巨大生物の育った理由を知りたかった。
なぜにそんなでかい連中が生まれたのかを。

近頃は我が家の周囲から昆虫や野鳥や爬虫類の姿が消えた。
数年前はブラックベリの花にマルハナバチやクマンバチが来ていた。
狭い庭にも青トカゲやカナヘビが日向ぼっこをし、
網戸にはヤモリが張り付いていた。

それがどうだ、全然姿を見ないじゃないか。
五月のこと、ジャスミンにでかいクロアゲハが来てて
アタシは肝をつぶした。
蜂の代わりにこういう悪魔のごとき虫が来ては困る。

四条河原町のJAZZ喫茶“調類図鑑”には標本ケースが飾られ怖かった。
店が薄暗くて遠目の利かぬアタシには幸いだった。
いったいどうしてあんな不気味な虫が生まれたのだろう。
世界中の蝶と蛾はすぐさま絶滅して貰いたい。

昆虫や野鳥、狸に狐、蛇あたりは地に満ちて貰いたい。
啼くウグイスに目覚め、集く虫に眠り
満天の星を仰ぎ見ながら夜の獣の声を聞く。
恐竜が居なくてもいいからそんな日々を送りたい。

真夜中にヌエに啼かれてはとても困りますけど。