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山々の奥には山人が住んでいる。
佐々木嘉兵衛さんは、今70歳代だが、生きている。
佐々木さんが若い頃、猟をして山奥に入ったところ、遠くの岩の上に美しい女がひとり、長い黒髪をくしけずっているのを見た。
顔は極めて白い。
佐々木さんは、不敵な男だったので、すぐに銃を差し向け打った。
女は弾が当たって倒れた。
そこに駆けつけてみると、背の高い女で、ほどけた黒髪はその背丈より長かった。
のちのちの証拠にするために、その髪を少しばかり切り取り、輪に束ねて懐に入れ、やがて家路をたどった。
途中に耐えがたく眠くなったので、物陰に行き、しばし、まどろんだ。
その夢とうつつの間に、これも背の高い男が一人近づいて、懐中からその束ねた黒髪を取り返し、去って行った。すると、たちまち目が覚めた。
山男だったんだろうなあと佐々木さんは言う。