遠くから、名前を呼ばれて振り返る。
ついこの前、お友達になった彼女が私に向かって手を振っていた。
彼女はかわいい。
セミロングのさらさらな茶色の髪で大きい目をしている。
小動物みたい。あれだ、リスみたい。
彼女には薄い水色がよく似合う。彼女が夏に着ていた、デニムのシャツの色だ。
あんまり可愛かったからその色がほしくなって買ったけど、私には似合わなかった。
ああ、って思った。
人には顔があった。
当たり前だけど、そんなことを考えた。
鏡を見てみた。
鏡なんて毎朝見てるけど、実際自分の顔じゃなく寝癖だけを見ていたようで、ああ、私ってこんな顔なのか、と思った。
整形なんて痛そうなことは絶対したくないから、私の顔はこれでしかない。
まあそんなこと、あんまり実感が湧かないけれど。
私が提灯アンコウで、提灯アンコウのあの提灯の部分が、鏡であればいいなと思う。
目の前に鏡をぶら下げていられたら、いつでも自分の表情が確認できる。
自分の嬉しい顔が、悲しい顔がわかれば、自分の顔が自分のものであることをはっきり認識できるかもしれない。
リスみたいな彼女は、私に手を振った。
大きな目を細めることなく笑うのに、ちょっと憧れた。
口の開き方がかわいかった。
彼女はその顔を鏡で見たことはないんだろうな、と思う。
こんなにかわいい笑顔を彼女が自分で見られないのはかわいそうだけど、それを私が見られることは、すごく素敵なことだ。