今回取り上げるのはコレじゃ!



ハイタイム 箱石達 第100回MANGAグランプリ優秀賞受賞作品

増刊月刊ヤングジャンプ二月号 2010年1月19日(火)発売

あらすじ
第100回MANGAグランプリ優秀賞受賞作品! 新鋭が描くサスペンス・ホラー!! 
どこにでもいる不良高校生・ヒロ。酔った勢いで世界史の教科書を“ゴミ箱”に捨てた日から、
彼の日常は奇妙に歪み始める……。


まずは診断じゃ…ふむ…


SFを高校生らしい悩みで描いた良作。
コマ運びがスムーズでいつのまにかストーリーに引き込まれる。
しかもそれが作為的ではないので、別のテーマで描いても発揮する才能を感じるのう。



問題点を挙げるとすれば


キャラに一貫性がない。
例えば主人公ヒロ(以下ヒロ)は不良で、夜飲み歩いたり、学校をつまらなく思っている。
そんなヒロが毎日重たい重たいと教科書を持ち歩くじゃろうか。
ゴミ箱に教科書を捨てるような奴が、次の日授業を気にするじゃろうか。
母親の不倫にうんざりしている奴が、平気で自分も浮気をするじゃろうか。

キャラがぶれると、読み手をストーリーから置き去りにする原因になり
主人公の悩みを読み手が一緒に考えてくれない(読み手が感情移入できない)。
その時々に主人公がキャラに関係なく自由に行動をするのは、いかにも高校生らしいと
言えばそうじゃが33pという短いページ数ではむしろマイナスに働いてしまうじゃろう。

他にも、ヒロの友達の黒髪(以下黒髪)が説明をするだけでストーリーに関わってこないのは
勿体無い。友達で目立つので何かに活用させたいのう。

不良の少女アキ(以下アキ)はストーリーの根幹に関わっているわりにキャラが全く無い。
男遊びが絶えないという片鱗は見えるのじゃが、キャラまで昇華出来ていない。

真面目な少女マリ(以下マリ)はどうしても後半いきなり登場した感じがする。
マリがヒロを「あたし知ってるんだよ?」と脅すが、前半のどこにもマリがいないことを
読み手も知ってるので何の脅しにもなっていない。ヒロだけがあせっているのじゃ。
というよりヒロも現時点ではバレて困ることはまだやっていないしのう。

どうしてこのようにキャラの一貫性が無くなってしまうかというと、
作者が、思いついたシーンをつないでマンガを描いているからじゃ。
良いシーンが思い浮かぶのはかけがえのない才能じゃが
シーンとシーンの間につながりが無いと、キャラがぶれる原因になり
せっかくの才能を作品に発揮できなくなるのじゃ。



それではわしの処方箋じゃ!


この作品の場合テーマを変えたりキャラクターを新しくつくる必要は無いじゃろう。
面白くなる要素はもともとマンガの中に隠されているので、キャラの関係性を明確にするだけで
各々のキャラが際立つので、もっと引き込まれる面白い作品に生まれ変わるじゃろう。


まず、マリを冒頭の不良グループに参加させるようにしよう。
不良のアキとまじめなマリが一緒に登場すれば関係性が描きやすいじゃろう。


また、マリもヒロに好意があれば不良グループについてくるじゃろうし
何より重い教科書を毎日持ち歩いていそうじゃ。
そしてここでヒロにマリの教科書を捨てさせれば、
二人の関係性も描けるし、二人だけゴミ箱の存在を覚えていても不自然じゃない。
読み手も二人を覚えるじゃろう。


アキは前半特に変更は無いが、ヒロの母親登場後は男遊びや浮気性を強調した方が良いのう。
実はヒロと浮気をしながら黒髪とも関係を持っていることにしてもいいじゃろう。
そうすればマリとキャラの差がでるし、、母親と同じような行動を取ることで
ヒロに嫌悪感を抱かせるのは後に伏線になるぞい。


マリは前半の教室でもアキとともに登場させる。この時点でヒロがゴミ箱で起こしている行動を
知っているので、知らないふりをしてとぼけたり、もっとヒロに好きになってもらうために行動する。
例えばブラを消したことでヒロは天国だと思うのじゃが、
実はマリが能動的に誘惑し付き合うように促した、という事もできる。


ヒロはゴミ箱に興味を持つことは変わりないが、「あれ(ゴミ箱)を使えばもっと面白いことが」と
言ってるくらいなので、面白おかしくなるエピソードを略さないで足すべきじゃ。
ギャンブルで儲けたエピソードよりも後半を考えると女関係で何かを消した話が聞きたいのう。

そしてせっかく『不倫をする母親に嫌悪感を抱く』というキャラがあるのじゃから、アキが黒髪とも
寝ていることを知り、自分自身の浮気も合わさり自己矛盾におちいりアキを殺してしまってもいい。
死体をどうするか悩んでいるところでマリに「あたし知ってるんだよ?」を言わせると
かなり有効に効いてくるじゃろう。


そうすることにより、
実はマリはゴミ箱のこともヒロとアキの浮気も知っていて、ライバルを消すためにこのタイミングを
ずっと狙っていたのでは?とヒロ共々読み手も疑心暗鬼にさせることができるぞい。



ラスト、生きてる人間全員が消えるようにしたいのであれば、
ヒロがマリに秘密を握られたことを疎ましく思い、アキの死体をマリと二人で捨てに行くときに
マリも無理やりゴミ箱につめるというのはどうじゃろう。
マリに「あたしはまだ生きてるんだよ!」などと言わせて消えれば
生きてる人間全員消えるというのが分かり易くなるのではないじゃろうか。


本日の診断はここまで


自分のマンガの中でテーマとして何か伝えたいことがあるとき、
キャラの個性は一見邪魔になると思われがちじゃが
一貫性を持たせ、主人公の感情に読み手がうまく乗れば
それが一番の伝わる方法となるのじゃ。

特にこのマンガは作者に才能がある分、とても勿体無いと感じてしまうのう。
この改善点に注意すれば、もっとマンガが健康になるぞい!