ス-パ-カ-女刑事  第4回 | 芸能界のちょっとだけ、知っていることについて

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ス-パ-カ-女刑事  第4回
えなり田かずきはそう言うとまたこわいものでも見たように松浦田あややの陰に隠れた。
「だからそういう人物だ。君、調査したものを持って来い」
そう言うと部下の刑事が何かメモを持って来た。
「三ヶ月前からここにやって来た流れ者だそうだ。名前は荻野雄一、通称はな。ただちに手配して探している」
すると階下からあわてて二階に上がってくる刑事が角田田信朗の前へ行った。
それを持って来た刑事も慎重にそれを扱っているところから見てそれが重要な物件だと認識しているのだろうか。
角田田信朗も白い手袋をはめるとそのノートを受け取った。中身が破り取られている。
角田田信朗はそのノートをひっくり返して眺め透かした。ノートの表には大きな字で「光速零号」と題名が描かれている。松浦田あややにも、えなり田かずきにもぴんとひらめくものがあった。
 つつと角田田信朗のそばに行くとそのノートを見つめた。
「このノートの写真を撮らしてもらっていいですか。これこそが、きっと私がこの調査に乗り込んでいる目的だと思うんです」
松浦田あややがこの事件の調査に関与しているのはほかでもない、しかし李宗行が殺されたということも重要だがそれは警察の仕事である。彼は工業技術院の密命を帯びて知的財産が守られているか調べるのが仕事なのである。
そのことを角田田信朗も知っているようだった。
「さっさとしてくれよ。すぐに鑑識に回さなければならないからな」
角田田信朗は憮然とした表情で言った。二階の現場、角田田信朗はそれが露天温泉で行われたと思っているようだが、
そこで鑑識の連中が女性が白粉を顔に付ける道具のようなブラシを使って指紋を採集したりして、忙しく働いている。
松浦田あややとえなり田かずきの二人はそこでは居場所がないようだったし、彼らにとって重要な物件の写真も撮影したことだし、
もう東京に戻ることにした。この別荘の前庭に戻ると愛車デトマソ スピードスターM530が静かにその場所に待っていた。
楡の林の前に停まっているその車の横に子供の姿が見える。さかんにその車の運転席の中などをのぞき込んでいる。
松浦田あややとえなり田かずきの二人がデトマソ スピードスターM530のそばに行くとその小学校三年生ぐらいの子どもは顔をあげた。
「この車、おねえさんたちが乗って来たの。こんな車、はじめて見たよ。何て言う車」
「デトマソ スピードスターM530、特別仕様車、制作費五十億、うちのじいさんが油田を持っていてね。
そんなことがなければ作れなかったのよ。うっふーん」
子どもにはその言葉がぴんと来ないようだった。
「お姉さんたち、あの別荘で起こった殺人事件を調べているんでしょう」
「そうだけど」
「あの刑事さんとは関係がないの。四角い顔をして筋肉マンみたいで、いつもどなっている刑事さん」
この子どもの言っているのは角田田信朗警部のことらしい。
「僕が隣りの家のことを話そうとしたら子どもは邪魔だからあっちへ行けなんて言うんだよ。悔しいからおっぱいの大きいアイドル顔のおねえさんに隣りの家のことを教えてあげる」
松浦田あややは聞き耳をたてた。この子どもは隣りの別荘の住人らしい。近所なら何か知っているかも知れない。
「何、君は隣りの別荘に住んでいるのかい」
「そう、あの家」
少年が指し示したその家は建て売りらしい、ここらへんの高級別荘に比べると少し見劣りがする。
「ここに住んでいたおじさんの事だけど。李宗行さん、ここの家にときどき女の人が来ていたよ。
こっそりとこの家の裏木戸から出入りするのを見たことがあるんだ」
「どんな人」
「二十五才くらいの人だと思う」
「僕の部屋からここの家の裏木戸がよく見えるんだ。そこからその女の人が出入りするのを見たことがあるんだ。
二十五才ぐらいの女の人って一人だけじゃないよ。二人ぐらいここを出入りしていた女の人を見たよ。
どちらも二十五才ぐらいの人」
「その人の顔を覚えているかな」
「思い出せないけど、見れば、ああ、あの人だってわかるくらい。それから自転車で湖の向こうにあるコンビニに行って夕方くらいに戻って来たことがあったんだけど、湖のそばに露天風呂があるのを知っている。
あそこで遠くからだったけどその女の人を見たことがあるんだ。それでこわくなっちゃってすぐ自転車を飛ばして家に帰って来ちゃった」
「何で、君、こわくなったの」
坊主頭のえなり田かずきが上目遣いに大きな頭を斜め前方に向けながら聞いた。年がこの中で一番近いから話しやすいのかも知れない。
「このあたりにゾンビが出るという話を知っている。その女の人がゾンビと一緒に立っていたんだ」
「どうして君はその女が隣りの家に出入りしている女の人だと思ったのかい」
「裏木戸から出入りしている女の人ですごく印象に残っている服を着ていたんだよ。
下は普通のデニムのズボンなんだけど、上に着ているTシャツが前後に大きなコウモリの写真がプリントされていたんだ」
松浦田あややとえなり田かずきの二人はデトマソ スピードスターM530に乗り込んだ。
帰りの高速の中でまたステアリングホイールのレバーを操作して渋滞している車を飛び越えながら二人は東京に戻った。松浦田あややはラブ・リボルーションを見ることが出来た。
パトカーが追って来ないのも交通安全協会からの捜査の手が伸びて来ないことも不思議だった。
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