ス-パ-カ-女刑事  第2回 | 芸能界のちょっとだけ、知っていることについて

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ス-パ-カ-女刑事  第2回

五分後にはデトマソ スピードスターM530の車内にはでっかいおっぱいの松浦田あややと助手席にはえなり田かずきの二人が前の席に座っている。ふたりの車は軽井沢を目指して高速に乗っていた。もちろん高速に乗っていてもこの車の性能を発揮出来ないのはもちろんである。
何しろフォミュラーカーよりも速いのだから。
藤井田隆という人物からの緊急連絡は軽井沢の高級別荘のいっかくで李宗行という人物が
殺されたので調査に行けという連絡だった。松浦田あややは警察ではなかったから捜査ではなく、調査である。
なにしろ、坊主頭の落語クラブに入っている中学生を助手としてつれて行くのだから、いくらなんでも捜査は出来ないだろう。そして藤井田隆の話によると殺された李宗行の死体発見現場は少し変わっているようだという話である。それは現場に行ってから自分の目で確かめてみろという話だった。彼がこの事件に乗り込むにはそれなりの理由がなければならない。
それはこの被害者の李宗行という人物にあった。彼はミサイルの軌道計算の専門家で軍事関係者にとっては非常に有用な人物であるということだった。彼の開発したミサイルの軌道の予測装置はこれまでのそれに比べて格段の進歩を与えるものだそうだ。そしてそれが藤井田隆が松浦田あややに調査を依頼した主な理由だった。
「どうすればあややさんのように、テストドライバーになれるんですか」
渋滞している高速の中でえなり田かずきは松浦田あややに話しかけた。えなり田かずきは松浦田あややにあこがれていた。
いや、表面的にはそういう態度をとっていた。何度も言っているがえなり田かずきは松浦田あややのでっかいおっぱいに興味があるのである。しかし、そのことはおくびにも出さなかった。
でもいつか風呂場であややの入浴姿を盗み見たことがあった。
ちょうどあややが洗い場に出て石鹸の泡をたくさんたてて泡を自分のドレスのように身にまとっていたときだった。
しかし、あややはえなり田かずきに自分の裸を見られたことは全然知らない。
「このデトマソ スピードスターM530は作るのにいくらぐらいかかったんですか」
「知ってどうするの、えなり田くん」
松浦田あややは窓の外を見ながら西部劇に出て来るヒーローのように苦々しく笑った。しかしその口元には喜びがあふれている。あややは不純な動機を持ちながらえなり田かずきがあやのそばを離れたがらないことを知らない。
「五十億ぐらいかしら」
「ごっ、ごっ、五十億」
目を丸くして驚いてシートの背もたれに逆海老ぞりになっているえなり田かずきを見て静かに松浦田あややは話し始めた。
「うちのじいさんの実家は福島の貧しい農家だったのよ。それがどういうわけか畑の中から石油が出て来た。
日本にはないような話だわよね。その石油はほとんど無尽蔵みたいで毎年百億の収入があるのよ。
その頃うちのじいさんはすでに東京に出て来ていてあの自動車修理工場をやっていた。
うちのじいさんの腕はぴかいちだわよ。旧車を再生させることにかけては右に出るものはいないのよね。
えなり田くんもうちの庭に置いてある外車を見たでしょう。
あのブガッティもマセラッティも廃車同然だったのをうちのじいさんが直したんだわよ。
しかし年収百億で日本一の腕を持つ自動車修理工場の親父、このことを誰も知らなかったのよ。
税金の申告のとき一ヶ月、遅れて申告していたからよ。しかし、ある人がそのことを知ってうちに尋ねて来たんだわ。
日本工業技術院特殊技術育成課、課長、藤井田隆、わたしの上司だわよ。別名、産業スパイ防止課、そのじつ、外国へ行って他の国の産業技術のスパイをするのも仕事にしているけどね。
ある日、あいつが君の家に行ってもいいかと言ったのよ。あややはふたつ返事で答えたけどね。
それでうちのじいさんのやっている修理工場に上がり込んで話したわけよね。
今いろんな先進国は自分の国の産業技術を守るためにいろいろな法律を作り、行政でそれを行っている。
しかるに我が国ではその機関がないのだ。そこで秘密捜査員を作ることにしました。それはあなたの孫娘さんです。
 そしてそれ相応の乗り物が必要である。つきましては国から二十五億出しましょう。
おじいさんの方から二十五億出してください。そうしておじいさんの旧車のリストア技術と産業界の全技術を集結してあなたのお孫さんの乗る車を作りましょう。って言ったのよ。
そうして出来たのがこのデトマソ スピードスターM530というわけよね。
でっかいおっぱいのわたしにはぴったりな車だわよ。
そしてそのドライバーがこのわたし、ボインちゃんなわけよ。加速を効かせてみたら、おっぱいがぶるんぶるんと震えて身体が感じてしまうのよ。ちょっとセクシーな車だわよ」
ここで松浦田あややはまた得意そうな顔してニヒルに笑った。それを見ているのはこの横に座っている
坊主頭の中学生しかいなかったが。
「すごい車なんですね。この車」
「当たり前でしょう」
そんな冷静な会話をえなり田かずきはしていたが、内心ではあややの体臭を感じて興奮していた。そしてエンジンの出力を上げるたびに確かにあややのでっかいおっぱいは小刻みに震えるのが見える。
うれしい、えなり田かずきは内心喜んでいたがそのことは口にださなかった。
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そして彼はかえって関係ないことを言った。
「でも、そんなすごい車で高速を五十キロで走っているなんてもったいないですね。
でもこの古典落語を聞きながら走るのにはちょうど良いですけど。この古今亭しん生の猫め皿を聞くにはちょうど良いですけど」
「・・・・・・・」
「あややさん、しん生は嫌いですか。僕もこの高速の中で聞くには少しあわないような気もするんですよね。
そうだ金馬の居酒屋にした方がいいかもしれませんね。この前の落語クラブの発表会で僕は居酒屋をやったんですよ。
居酒屋の小僧とよっぱらいの客の掛け合いなんですが居酒屋の小僧の描写が秀逸だって顧問の先生からほめられたんですよ」
「・・・・・・・」
「そうだ。あややさんは格好いいから落語家も格好いい人がいいかも知れない。円生はどうです。
円生はひととおり歌や踊りもやっていますからね」
「彼、・・・・・」
「知らなかったんですか。彼はうちの中学の卒業生なんです。七十年も前のことですけどね」
「・・・・・・・」
 松浦田あややは自分の隣に座っているのがこんなポロシャツを着ている中学生ではなくて野生的なカウボーイみたいな男で自分を荒々しく抱きしめてくれればいいのにと思った。
いやになっちゃうわ。こんな可愛いあややがいるのに。となりに座っているのは中学生なんだもん。
車の動きはますます渋滞していた。高速道路の上についている表示板を見ると
一キロさきで事故があり交通規制をやっているという表示が出ている。
「そうだ。今日はラブ・リボルーションのやる時間だったわよね。えなり田かずきくん」
「そうですが、あやさんはあの番組を見ているんですか」
「そう、木村だくろうのファンなの。あれが始まるのは何時からだっけ」
「いつもは夜の八時からなんですが今日は特別番組があるから夜の六時からですよ」
「ええっ」
松浦田あややは焦った。この高速の混雑状況では一時間ぐらい調査をするとしても帰って来られるのは八時を過ぎてしまう。
なんとしても早く帰らなければならない。ラブ・リボルーションを見るためには。しかし彼女はわからなかった。
テレビさえあればたとえば軽井沢の喫茶店の中でもホテルの中でもそこのテレビを使って東京と同じテレビを見ればいいということを。東京でも軽井沢でもやっているテレビは同じなのだから。
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