カンフー刑事  第二回   | 芸能界のちょっとだけ、知っていることについて

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カンフー刑事  第二回     
「こんなところで査定をしていていいのか
な」
「こらっ、生意気だぞ。平介。お前なんか、マスターに言って首にしちゃうぞ」
「おおっ。こわあーい。捜査一課の責任者が僕のことを首だって。マスター」
警視庁内部の社食でもある喫茶店の中で捜査一課の後藤田まき警視正は部下の内申書を紺野田あさ警部とともに読んでいた。コーヒーを飲みながら読んでいるのでそのこぼしたシミが部下の内申書の隅についた。
「あれ、汚れちゃったわ。でも気にしない、気にしない」
ひと月にいっぺん捜査一課では部下の日常の報告をさせている。それは昇進試験とは別の目的がある。もちろん内部の人間の不祥事を未然に防ぐという目的がある。その目的には充分に意味がある。不祥事を起こしそうなグループが警視庁捜査一課の中にはいた。紺野田あさみ警部は下の方の欄にある提案書に目を通していた。
「夜の弁当代を精算するのをカードでやるようにして欲しいという提案が結構ありますね」
「月の弁当代を払うためにその費用の入ったクレジットカードを提供して欲しいというのだろう。そんなカードを支給して勝手に金なんか借りられたらおおごとだよ。みんな裏捜査一課の連中が口裏を合わしてやっていることに違いないわさ。全く役にも立たない馬鹿者どもが。捜査一課の落ちこぼれどもたちの言いそうなことだわ」
「警視正、じゃあ、つぎの内申書に行きます」「つぎは誰だ」
「石川田りかです」
「あの落ちこぼれか」
「ええ、裏捜査一課の一員です」
「また、あいつが変なことをやっていると云う噂が耳に入ってきたんだけど」
「どんなことですか」
「うちで運営している犯罪資料館にしょっちゅう来て、写真をぱちぱち撮っていると云ううわさが資料館の館長から苦情めいて来ているのよ」
「自己研修としていいことではありませんか
、まき警視正」
「ちっとも、いいことではないわよ。あいつのやっていることが自己研修であるもんですか。あいつが休憩室で話していることをみんなメモしてあるのよ」
「警視正もなかなか悪ですね。裏捜査一課のなかにスパイを放っておくなんて。スパイは一体だれなんですか。わたしにも教えてくださいよ」
「だめよ。これは絶対の秘密なんだからね。あいつらの誰かに淫行なんてされたら、どうなると思う。そのスパイの重要性がわかるでしょう。わたしたちはあいつらのお目付役なのよ」
「それでなんて言っているんですか。まき警視正、石川田りかは」
「全く、笑止千万だわよ。自分が警視庁にそして捜査一課に入ったのは将来のためだなんて言っているのよ」
「どういうことですか」
紺野田あさみ警部は目を丸くして後藤田まき警視正の顔を見上げた。
「捜査一課にいる自分は羽化を待つさなぎであるなんて生意気なことを言っているのよ。あんな落ちこぼれは捜査一課とは呼べないわよ。落ちこぼれを集めた裏捜査一課だわね。まあ、それはいいとして、あいつは国民の税金を無駄にして無駄飯を食っているのよ。この捜査一課での経験をもとにして、将来はミステリー作家として世間の喝采を浴びるんだとか、言っているって言うじゃない。ばかみたい」
「みたいじゃないですよ。ばかじゃないですか。正真正銘の、あいつは。あいつなんかには事件らしい事件は担当させていないじゃないですか。どんな事件も担当していなてというのに、どうやって事件のねたが得られるなんて思っているんでしょうね」
「そうさね、そのうち落ち度を見つけてお払い箱にするつもりよ。今のうち首ねっこを洗っておけと言いたいわよ。あの落ちこぼれが」
「本当に、どうしてそんな夢のようなことを考えるんでしょうね」
「まあ、それも仕方がないわよ、世の中には幻影を信じ込ませて利益を得ると云う商売が国のお墨付きを貰って成り立っているわけだからね」
「後藤田警視正、いいことを考えました」
「なにを」
「捜査を再開しろとか、そうしないと裁判をおこすとか、週刊誌に訴えてやるとか、やんやと騒いでいる心中事件があったじゃないですか。裏捜査一課の連中にあれを担当させましょうよ。うちで一番暇で必要でない人間なんですから。苦情対策にはもっとも適任ですよ。うまくいけば週刊誌かなんかにたたかれて首にすることだって出来ますよ。もし、そうでないとしたって、全く労多くして益ない仕事なんですからね、まき警視正」
「そうね、紺野田警部」