電人少女まみり  第24回 | 芸能界のちょっとだけ、知っていることについて

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第24回
机の表面に浮かび出た新垣の顔は文字どおり悪魔にとりつかれた顔だった。
目は赤く血走り、顔中が毛だらけだった。しかし、その顔はレリーフのようになっていて机の表面から飛び出すことはない。
それから新垣は口を開くと赤い舌をペロペロと出した。そして新垣の顔が消えて今度はまたわけのわからない文字が机の表に現れた。
「これは、これは」
井川はるら先生はその机の表面に書かれた文字を見つめた。
「超古代マヤ文字だわ」
「なんて書いてあるんですか。先生」
石川りかが不安を顔中に浮かべて曲げた人差し指を唇のあたりに持って来た。
「わからないわ」
机の表面には次から次へといろいろな超古代マヤ文字が浮かんでは消えて行く。
そして文字が消えたかと思うと今度は毛だらけな顔がふたつ浮かび出た。
「今度は新垣がふたり」
チャーミー石川が甲高い悲鳴を上げる。
「よく、見るなり。新垣によく似ているど違うなり。これは新垣ではないなり」
机の表面では新垣によく似たげじげじの蜘蛛のような顔がやはりにたにたと笑っている。
矢口まみりは大きな登山ナイフをとりだすとその顔をナイフで刺そうとした。
「やめなさい。まみりちゃん。そんなことをしても効果はないわ。新垣は黒魔術も白魔術の両方のらち外の生き物よ」
「そうだ。俺は生徒の机にそんなことをすることは許さない」
村野武則先生も全く意味不明なことを言った。
「そんなことを言っていたら、悪魔が新垣のコピーが増殖するなり」
まみりが絶叫すると今度はそのふたつの顔も消えて、誰も揺らしていないのに新垣の机だけがぐらぐらと揺れ、
また悪魔のような叫び声が誰もいない教室のあちこちから聞こえる。そのとき鶏の朝を告げる鳴き声が聞こえた。
すると机はまた静まった。誰かが校舎の中の電源を入れたのか教室の中がぱっと明るくなった。
教室の入り口のところであの不気味な用務員がテープレコーダーを持ちながら立っている。
「また、あの化け物が出たんでごぜぇますかな」
用務員は無表情だった。
「この鶏の鳴き声を聞かせると収まるんでごぜぇますよ。けけけけけけ」
用務員は自分の指でテープレコーダーを指し示した。
村野先生は憤って用務員のそばに行くと喰ってかかった。
「君、こんなことが夜な夜な起こっているんだったら、なんで学校に報告しないんだ」
「おかど違いでごぜぇますな。理事長が報告しないでいいと仰ったんで。けけけけけけけ」
用務員は薄気味悪く笑う。
「やめて。やめて」
教室の隅で女がしゃがみ込んで耳をふさいでいる。思わず、まみりはその女のそばに行った。女はやはり半狂乱である。
「安心するなり。新垣はここにはいないなり」
「やだ。やだ。まみり。わたしはこんなところ、やめてやる。ここは学園なんかじゃないわ」
石川りかは絶叫した。
「ここはハロハロ学園なんかじゃない。ここは、ここは、妖怪、妖怪学園じゃないの」
石川りかはあまりのショックのために耳を押さえると泣きじゃくりながら、しゃがみ込んだ。
 しかし、このような珍奇な現象はこれだけで収まらなかったのである。
 警視庁捜査一課、王沙汰春警部は警視庁内部の休憩室で大きなソファーに腰掛けながら新聞を読んでいた。
そこ捜査二課の同期の警部が入って来た。
「世の中、だいぶ、変なことになっていますな。今朝の新聞を読みましたか。おお、読んでいましたか。
隠密怪獣王の事件も解決しないというのにね」
ここで王沙汰春警部がぴくりと眉を動かしたので、同期の警部は王警部が隠密怪獣王の事件を担当していたということを思い出した。
王警部はその警部の方を振り返る。
「隠密怪獣王の方はなかなか良い情報があるんで解決も近いかも知れませんよ」
王はそう答えたものの、何の有力な情報も得られはしなかった。
しかし、あの事件のとき、隠密怪獣王と戦ったのは何者であったのだろうかという疑問は常に残っていた。あの巨大ロボットのことである。あの発明家、つんくパパもそのことを言わない。隠密怪獣王と巨大ロボが戦ったとき、海中の中で何かが起こったことを期待していた。あの事件のとき、あの時間ではもしかしたら、海中に作業船がいたり、潜水夫が何か作業をしていたのではないかと期待していた。もし、そうならもっと情報が得られるのである。
「人類の誕生する前に古代文明が存在していたというじゃないですか」
「何がですか」
「王さんが読んでいる新聞ですよ」
「ああ、これですか」
王沙汰春もこの新聞の記事を信用することは出来なかった。新聞の発信地は南米のアンデス山中の中である。
「信じられませんね」
「同感です」
新聞によると、一般紙であったが、南米のアンデス山中でインカ文明の研究者が偶然にも地中の発掘作業を
やっていると吸血鬼の棺のようなふたつの材質のわからない棺を発見した。それを大学の研究室に運び調査を続けていた。
そして蓋をあけたところ、手も足も毛だらけの人間らしい生物が入っていた。
蓋を開けた時点で生きているようだったが、蓋を開けてから二分五十秒後にこのふたつの生物は目を覚まし、
かってに棺から出て来て言語らしいものを話し始めた。その言葉というものも全くわからない言葉だったが、
その国に超古代マヤ文明の研究者というのがいて、当時、それは全く信じられなかったが、名乗り出て研究室にやって来た。
そしてこのふたつの生物の話す言葉を翻訳し始めたのである。そして信じられないことだが、その生物のいうことには、
自分たちは数十億年前に栄えた超古代マヤ文明人である。
そして日本という国のハロハロ学園というところに自分の娘がいるから会いに行きたいという話だった。
「超古代マヤ人ってどんな顔をしているんですか」
この話をまだ信じられない王沙汰春警部は当然の疑問を口に出した。
「顔中、手足も毛だらけらしいですよ。そして顔はインカ人、いや、日本人に似ているという噂です。
ほら、そろそろワイドショウが始まるので、それが出て来ますよ」
警部は休憩室のテレビのスイッチをつけた。ワイドショーのタイトルが出てくる。
「超古代マヤ人、アンデス山中から出現、日本のハロハロ学園に娘がいるから会いに行かせろと要求」
ブラウン管いっぱいに大きな文字が浮かび出た。そしてそのつぎに顔中、手足中、毛だらけの生き物が映し出され、
きょろきょろとカメラのある部屋の中を見回している。そしてカメラがとらえたその顔はハロハロ学園の不良グループの一員、
新垣にそっくりなのだった。
「これが超古代マヤ人なのか」
「そのようですね」
この時点で王沙汰春警部は自分にこの超古代マヤ人は関係のない存在だと思っていたのだ。そのとき休憩室のドアが叩かれ、
部下の刑事が顔を出した。
「王警部、警視総監が呼んでいます」
王沙汰春警部は警視総監の部屋をノックした。この部屋に入るのは大昔、警部に昇格するとき、辞令を貰いに行った大昔に一度だけだった。
ドアを開けると警視総監がいきなり言った。
「君が隠密怪獣王の事件を担当している王沙汰春くんか」
警視総監の横には大阪の南にあるホストクラブのホストみたいな男が立っている。
「王警部、ここにいるのがエフビーアイから派遣された日系二世の新庄芋くんだ。独自に隠密怪獣王の事件を捜査するためにやってきた」
王沙汰春警部はあからさまな敵意をこのホストみたいな男に抱いた。
「隠密怪獣王事件は日本の事件ですよ。こんな安ホストクラブのホストみたいなのが日本くんだりまでわざわざやって来て、
何をするというんですか」
「王さん、あなたの認識は甘いデス。隠密怪獣王は人類の敵デス。
エフビーアイには独自の捜査力がアリマアス。ワタシ、隠密怪獣王、トラエマアス」
王沙汰春はこのホストみたいな男に敵意を感じた。敵意と言えば、ハロハロ学園も敵意があふれていた。
新垣の机のまわりに不良グループがたむろしている。新垣を取り囲むようにしている。
「まみり、飯田たちが新垣を取り囲んでいるわよ」
石川りかは何事もないように旅行ガイドを身ながら、横目で不良グループの方を見ていた。
「新垣だって、不良グループじゃないなりか」
「まみり、知らないの。新垣って人間じゃないんだって。超古代マヤ人なんだって。ニュースを見なかったの」
「そんなこと知っているなり」
「それでわかったわ。新垣のまわりに変なことがたくさん起きるのも。
新垣の机を生体反応を調べたらあの机は生物だとい結論が出たそうよ。ほらほら、飯田のいじめが始まるわよ」
石川りかが本のあいだから盗み見た。
「おらおら」
不良グループのリーダー飯田かおりは箒の竹の杖を使って机にへばりついている新垣の頭をこづいていた。
新垣は富士壺や磯巾着が岩にへばりつくように机にへばりついている。
飯田は机にへばりついている新垣をはがそうと竹の箒でごりごりとやった。
新垣は超古代マヤ語で何かぽつりと言うと悲しそうな目をして不良たちを見つめた。
「飯田のいじめは陰湿ね」
隣の席に座っているまみりに話し掛ける。
「ああやって市井さやかをいびり出したのよ。あの悲しそうな目を見るのは二度目だわ」
「お前、人間じゃないんだってな。超古代マヤ人なんだってな」
加護愛がよたって新垣に侮蔑の言葉を浴びせた。
「まみり、このままじゃ、新垣がいびり殺されてしまうわ。あのまみりの親戚の女の子を呼んであげましょうよ」
矢口まみりは無言だった。矢口まみりは新垣に対して複雑な気持ちを持っている。
松井くんとただ一人、同じ筆箱を持っている女。ゴジラ松井くんが新垣に対して特別に優しく接している場面を何度も見ている。
「ゴジラ松井くん、なんで新垣に優しくしているなり」
矢口まみりは何度も煩悶した。ゴジラ松井くんと新垣のあいだに何か秘密があったら。
「そのときは、そのときは、まみりは・・・・・・・・」
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