「ふたりの花物語」シリーズ1 竹本みつる りぼんカラーシリーズには月例号別冊付録77作と増刊号付録2作がある。合計79の優れた作品が1963年5月号から1969年9月号まで足掛け7年に渡って発表された。記念すべき第1作は竹本みつる「ふたりの花物語」、祇園の大料亭の箱入り娘で足の不自由なおいとと、下働きから舞妓になった娘小菊の強いきずなと友情を描いた作品である。互いを思いやりながらも抗うことのできない運命故、その思いに背いてしまい悔やむ少女の心情や、それでもまた引き寄せ合うきずなを巧みに描き、多くの読者の支持を得た竹本みつる。独自の雰囲気を描き出す漫画家である。

 

りぼんカラーシリーズの誕生・・・シリーズ第1作は『りぼんカラーブックス』と冠して発表された。が、第2作「しあわせの王子」では『りぼんカラーシリーズ』に改められており、以降最終巻まで続いた。第1作「ふたりの花物語」は竹本みつるがりぼん編集部をたずねたことで誕生した経緯が『りぼんの付録全部カタログ』集英社刊のなかで竹本みつるによって語られている。その一部を紹介する。「・・・2作目を描いてOさんに見てもらうと、若木書房という貸本マンガの出版社を紹介してくれて、1冊分128ページか短編32ページを毎月描くようになりました。そこで描いたうちのひとつがカラーシリーズ第1巻になった「ふたりの花物語」です。自信作でした。もう50年以上前のことですからどうして『りぼん』を訪ねたかはっきり覚えていないのですが、編集部でUさんというこわもての編集長が読んでくれて「良かった。うちでなんとか日の目を見られるようやってみるよ」と言ってくれました。それからカラーシリーズがはじまって、全部で9作描いています。読者からのお手紙はうれしかった。仕事が遅くて、1か月で32ページ描くのがやっとのわたしが128ページ描くのは大変でしたから、そのうれしさは今でも忘れられません」

 

カラーシリーズにおける竹本みつる作品の人気の高さは氏による作品が執筆漫画家陣のなかで最多の9作を数えることが物語っている。オリジナル作品のほかに文芸作品を原作とした「絶唱」原作 大江賢次・「伊豆の踊り子」原作 川端康成の2作品が続けざまに発表された。原作にマッチした絵柄で読者の支持を得たことが窺える。

 

 

 

 

 

おいとと小菊・・・

 

下ばたらきの小菊においとの母はやさしく・・・

 

こうして毎日のようにお薬師さまへおまいりするのが、ふたりのなによりのたのしみだったのです・・・

 

雪のふる冬がきてあくる年の二月のことでした・・・おさなくして父と母をなくした小菊と姉のお玉を育ててくれた仙三おじさんがたずねてきました。これまでも小菊の給金を前借りしてたのが・・・とうとう祇園で舞子にするというのです。

 

小菊をのせたカゴは・・・しずかにとおざかっていきました・・・

 

しばらくしてたかい薬師寺のかいだんをはうようにのぼっていくおいとのすがたがありました・・・

 

あの日から半年の月日がながれました・・・あのときの・・・柳橋をさるときの菊ちゃんのかおがおいとにはわすれることができませんでした・・・

 

おいとは清十郎にたのみこみ小菊のようすをみてきてもらったのですが・・・

たまらずおいとは祇園をたずねたのですが・・・小菊の姉のお玉にさとされ・・・

もうしわけございませんが小菊はここにはまいりません・・・どうか小菊のことはおわすれになってください・・・ほんとうにあの子のことをおもってくださいますならどうぞあの子のことはそっとしておいてください・・・

 

 

 

看護の甲斐あっておいとは回復しました。そしてあくる年の春、おいとに夢のようにうれしいはなしがありました。おおさかの医者がおいとの足をなおしてくれるというのです。

 

父といっしょに大阪にむかったおいと・・・そのとしの秋においとの足はみごとになおりました。

 

そして、あくる年の一月なかばのことでした・・・

 

お菊が柳橋にもどってくることになったのです。おどろいたことに小菊は事故がもとでひとがかわったようになにもかもわすれてしまっていました。

 

おいとは小菊にともだちになってほしいとたのみます。

 

小菊は・・・

 

 

おいとは小菊をさそって薬師さまにおまいりすることにしました

 

この作品の発表を機に、竹本みつる作品は続々とカラーシリーズに登場する。作品数は全9作におよび、シリーズ中最多の作品を発表。

 

施設で育った少女がパリ帰りの画家にひきとられ花嫁になるまでを描いた、シリーズ38 ヒヤシンスの花嫁 ダイジェスト

 

 

今回は新たにダイジェスト版を作成して紹介しました。以下は2019年10月8日に紹介したものです。

 

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