ご近所は、畑の種蒔きも終わり、
そろそろ庭木の手入れに入っています。
今は亡き叔母の家は、電車を乗り継ぎ、
我が家から2時間半ほどの所にあります。
ここよりずっと涼しいですが、季節はだいたい同じです。
そこには、ちょっとステキなお庭があります。
小さな和風の庭で、
南側は自然石を積み上げた石垣になっています。
少しお金はかかりますが、
熟練の庭師Sさんが手入れしてくれています。
今はきれいになっていますが、
私が相続した時は、荒れ放題の場所でした。
壊れかけた家の修理は後にするにしても
ご近所の迷惑にならないうちに、
ジャングルのようになっている庭のほうは
早くなんとかしないといけません。
夏休みのある日、
外側だけでもなんとかしようと、
その頃はまだ元気だった義父も手伝ってくれて、
一家総出で四苦八苦しながら
生垣を刈り込んでいると、
かなりご高齢の男の人が声をかけてきました。
それがSさんでした。
叔母の事を尋ね、
この庭の石垣は自分が作ったことや
毎年、叔母から庭の手入れを頼まれていたことを
話してくれました。
庭が荒れ果てていき、
風のうわさに叔母が亡くなったことを聞いて
ずっと気になっていたそうです。
私たちの素人作業が見ていられなかったのでしょう、
「よかったら、また自分が手入れしたいと思うんだけどね」
とおっしゃいます。
料金もごく普通のお値段で、後払いですから、
どのみち荒れ放題の庭ですし、
きれいになりさえすれば、と
すぐにお願いしてしまいました。
それと、いくら気になっていたとはいえ、
たった1日作業に来た日にたまたま出会うなんて、
きっとお庭が呼んだのだ、と思ったから。
(私は能天気で、割とこういう事を信じてる)
私はほとんど毎日片付けに来ていたので、
Sさんが初めて剪定に来た時、
ほぼ一日中、その作業を横目に見ていました。
伸びきった枝を切ってもらえればいいと
思っていただけなのですが、
Sさんの仕事ぶりに驚いてしまいました。
脚立を立てる足場を整えるために草を刈るとき、
枝を切るとき、葉を刈り込むとき、
とにかく作業が早くて正確!
どんどんきれいになっていきます。
1日の作業が終わって帰る時も
庭だけでなく、まわりの道路もきれいに掃除して、
使った道具もていねいに片付けて行きました。
5日後、庭の手入れが終わった時、
「生垣も庭木もすっかり刈り込んで、サッパリしたなぁ」
と思いました。
それが3年後、
ただ刈り込んだだけではなく、美しい形の植え込みに
成長していました。