義母亡きあと一人暮らしをしていた義父は、
今年2回の入院を経て、5月末にリハビリのできる施設に移りました。
「ここでは女の人ばかりで、男の話し相手がいない」というので、
地元のシルバー人材センターに電話して、
義父の囲碁の相手をして下さる方をお願いしました。
囲碁は、義父の唯一の趣味です。
退職してから市民会館の囲碁の会にずっと参加していました。
かなりの腕前だったと聞いています。
それが2年ほど前から、次第に碁会所に行く回数が減り始めました。
デイサービスもきらって利用したことがありませんでしたし、
食事以外に外へ出なくなったので、
なんども囲碁に行くことを勧めましたが、「来週行くから」と言いつつ
全然行きそうもありません。
よくよく話を聞くと、
「囲碁に行っても、もう全然勝てないから行きたくない。
負けてばかりではつまらない。年を取るとダメだね」と言うのです。
負けるのがイヤ、勝てずに年を取ったと実感するのもイヤか~
子どもに教えることをすすめると、
「教えとったんだよ。だけど、その子がじき上手くなって、
もう勝てなくなるんだよ」と悲しそうな顔で言うお義父さん。
その義父が今年の春先に肺気腫の悪化で入院。
91歳にして初めての入院でした。
退院後しばらくして今度は骨折で入院。
急性期が過ぎて退院し、リハビリできるホームに移りました。
ホームでお世話になり始めて4か月目。
持病や骨折がようやく良くなり、心身ともに回復してきたところへ、
以前からお願いしていた囲碁のお相手が見つかりました。
シルバー人材センターの事務の方には義父の性格も説明し、
「囲碁ができて、しかも勝負にこだわらず勝ちを譲って下さる方」
というワガママな条件で探していただきました。
その方とも始めはあれこれ言って会おうとしませんでしたが、
先日ようやく対局実現。
当日、お相手(Hさん)の方は早めに来てくださり、
私が行った時には、もう二人で碁を打っていました。
1局めは、かろうじて(とHさんは言ってくださった)Hさんの勝ち。
義父は眉間にシワを寄せて、いかにも不機嫌そう・・・
お相手の方がもう「1局やりますか」と遠慮がちに言って、2局め開始。
間もなくHさんが「あ、しまった!」と言うと、じきに勝負がついて
義父の勝ち。
お義父さんの実力だったかもしれませんが、
私には、お相手の方のお心遣いに違いないとしか・・・
今日またHさんが来てくださり、3局対戦。
義父が2局勝ったところで、
Hさんが2目置いて(ハンディをつけて)3局めに勝利。
お義父さんは上機嫌で「これからもよろしく」と言って、
Hさんと毎週囲碁を打つ約束をしたのでした。
どこまでがお互いの実力で、どこまでがHさんの気遣いなのかは
わかりませんが、お義父さんも
お相手の気配りを察したのではないかと思います。
(事実がどうあれ、こう思っているのが、一番幸せ):*:・( ̄∀ ̄)・:*:
何はともあれ、お義父さんは人生の張り合いをひとつ
見つけることができました。
Hさんに心から感謝しています。
勝負ごとは、勝てばおもしろいし、
勝とうと精進することにやりがいがあると思います。
実は、私も勝負ごとが大好き。
ただこのごろは、こんなことも思うようになりました。
「人生後半は、勝負ごとではない趣味もあった方がいいかも
知れない・・・」
精進するなら、勝負事でなくても、
書画に筆を振るうもよし、楽器を奏でるもよし。
書や音楽なら、
流派や曲目について好みの違いこそあれ、自分だけでなく、
周りの人たちみんなに、見て、聞いて楽しんでもらえると思うからです。