ちょっと脱線して映画(と小説とマンガ)の話です。
少し前にテレ東でやってた「アイガー北壁」、録画しておいたのを観ましてちょっと語りたくなった次第。
タイトルだけは知っていましたが内容を全然知らずにいて、アイガー・サンクション的なライトな娯楽映画かと勝手に思い込んでましたが全然違って実際の登攀事故をベースにしたシリアスな作品でした。
1936年、当時未到であった難所中の難所アイガー北壁に挑んだクライマー達。第一登の功績を焦るが故の僅かな油断と楽観、小さな判断ミス、それらが積もって悲劇に転がり落ちていく様がリアルで、またそれまでの晴天から一気に牙を剥く北壁の吹雪の描写が実に寒く恐ろしく引き込まれました。観たのは6月に入った暑い日でしたが、終盤は腕をさすりながら観ておりました。
私自身は運動苦手で、たまにミニベロの自転車でその辺を軽く走るのがせいぜいという駄目人間でありますが、山岳小説とかこういう極地・極限に挑む人間の物語とか読む分には大好きです。デズモンド・バグリィの「高い砦」とか、バーナード・コーンウェルの「殺意の海へ」とか。
ノンフィクション系だと南極探検隊を描いた「エンデュアランス号漂流」とか深海ダイバーが海底でUボートを発見しそこから謎が展開するミステリ調の「シャドウ・ダイバー」とか最高です。シャドウ・ダイバーの「雪だるまを転がすな」という言葉もこの作品に通じるところがありますね。この話では転がしてしまった訳です。
さてアイガー北壁ものと言えばクリント・イーストウッドで映画にもなった上記の「アイガー・サンクション」が有名ではあるのですが、イーストウッドがカッコいいものの物語としてはまあ軽いっつーか薄いっつーかな感じで。小説にしても作者のトレヴェニアンなら「シブミ」の方が文字通り断然渋くてカッコよく、これは個人的にはあまり評価していなかったりします。
イーストウッドはめちゃカッコいい
そしてこの有名な「アイガー・サンクション」に隠れて、という訳ではないですが山岳冒険小説の最高傑作とも呼ばれる「北壁の死闘」(ボブ・ラングレー)という小説があります。
引越し箱のどれかに潜ってて今手元にないのでhontoのリンクで
第二次大戦末期、追い込まれたドイツ軍が一発逆転を狙う作戦に天才クライマーの主人公が投入される。しかし主人公シュペングラーは若い頃のアイガー北壁での事故によるトラウマからクライミングを捨てていたのだが、軍の命令と戦局から北壁に追い詰められ・・というお話。本作の魅力はもう山ほどいろんな方が語っているのでここでは語りませんが、作者のラングレーは初期にこんな大傑作を書いてしまったがために以降の作品は決して悪くないのに皆霞んでしまったとか、冒険小説オールタイムベストなんて企画があると常に上位にランクインする、そんな凄い、寒くて熱い作品ですので未読の方は是非読んで頂きたい。損はさせません。
脱線ついでで、寒くて熱いと言えば第二次大戦中の巡洋艦クルーの死闘を描いた「女王陛下のユリシーズ号」(アリステア・マクリーン)も至高です。冒険小説オールタイムベストで1位常連の作品です。夏に読みましたが、終盤では腕をさすりながら読んでおりました。
いくつかの史実をベースにしながら歴史のIFを混ぜこんだフィクションなのですが、この主人公が山をやめるきっかけとなったトラウマの北壁事故、ってのがこの「アイガー北壁」で描かれた事故なんですね。主人公はこのクライマー達の友人で事故の現場に居合わせた、「アイガー北壁」での終盤でのルイーゼの立ち位置の設定。
かなりショッキングな展開で、史実を元にしているとは聞いていたのですが今回この映画を観て小説で描かれていた割とそのままだったと知って驚きました。
そしてこの「北壁の死闘」はコミカライズ版もありまして、かの「ベルセルク」が連載開始する前のアニマルという当時相当なマイナー誌で連載されておりました。
人物描写が薄めとかいろいろありますが、リアルタッチの絵とマンガらしく分かりやすくまとめられた展開で自分はこちらも好きです。
マンガ版でのクルツとヒンターシュトイサー。名前はアレンジしていると思ってたのでそのままとは知りませんでした。右上が主人公のエーリッヒ・シュペングラー
山岳ものと言えば、夢枕獏氏の「神々の山嶺」がアニメ映画で公開するんだそうですな。これも凄い好きな作品なので観に行こうと思っております。




