公認会話士と乾いた土 | Sadless Madness

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シンプルな心

A「私は空腹だ。」
B「それは、なぜか?」
A「空腹に理由があるのなら、食事をしていないから、と答える他ない。」
B「どうしたいか?」

A「空腹を満たすために、食事をしたい。」
B「それは、なぜか?」
A「食事をすることが空腹を解決するからと言う他ない。」
B「何を食べたいか?」

A「豆腐を食べたい」
B「それは、なぜか?」
A「豆腐以外に食べたいものがないと言う他ない。」
B「豆腐を食べたいのなら、食べるといい。」

A「この豆腐は、なぜ柔らかいか?」
B「豆腐は柔らかいものだからだ。」
A「それは、なぜか?」
B「柔らかくない豆腐を、私は知らない。」

A「それは、質問の答えとして適切か?」
B「適切ではないが、豆腐が柔らかいものとして認知されている理由は、私は知らない。」
A「私は、固い豆腐を食べたい。」
B「それは、なぜか?」

A「固い豆腐に、柔らかい豆腐よりも魅力を感じるからだ。」
B「柔らかい豆腐には、魅力を感じないか?」
A「感じないとは言っていないが、柔らかい豆腐以上に固い豆腐は魅力的だ。」
B「それは、なぜか?」

A「柔らかくないからだ。」
B「柔らかい豆腐には、魅力を感じないか?」
A「感じないとは言っていないが、柔らかい豆腐以上に固い豆腐は魅力的だ。」
B「それは、なぜか?」

A「固い豆腐を、食べたことがないからだ。」
B「固い豆腐は、存在するか?」
A「存在するかどうか、わからない。」
B「それは、なぜか?」

A「聞いたことがないからだ。」
B「存在するかどうかわからないものが既存のものよりも魅力的だとすると、仮に存在しなかった場合柔らかい豆腐を食べる度に存在しない固い豆腐を思うか?」
A「固い豆腐が存在しないのなら、柔らかい豆腐でいい。」
B「それは、なぜか?」

A「存在しないものを思っても前に進まないからだ。」
B「固い豆腐が存在しなかった場合、柔らかい豆腐の魅力は固い豆腐が存在した場合と比べ大きいか?」
A「豆腐に柔らかいものしか存在しないのなら、固い豆腐の事を考えることはなくなるのだから、柔らかい豆腐の魅力は固い豆腐が存在している場合に比べ大きい。」
B「それは、なぜか?」

A「“在る”は“無い”より魅力的だからだ。“在る固い豆腐”と“在る柔らかい豆腐”を天秤にかけた時と“無い固い豆腐”と“在る柔らかい豆腐”を天秤にかけた時、天秤は同様の動きをしない。」
B「“在る”“在る”と“無い”“在る”では、どのように違うか?」
A「“無い”は軽いから、前者は左が重いが後者は右が重い。」
B「それは、なぜか?」

A「“無い”ものに魅力はないからだ。固い豆腐と柔らかい豆腐がどちらも存在するのなら、どちらも“在る”から固い豆腐の方が重くなるが、魅力のない“無い”固い豆腐と魅力のある“在る”柔らかい豆腐を同じ天秤にかけた時、魅力のある“在る”方が重いのだから、当然そのような動き方をする。」
B「仮に両方が“無い”場合、天秤はどのような動きをするか?」
A「“無い固い豆腐”“無い柔らかい豆腐”を同じ天秤にかけた時"無い柔らかい豆腐"の方が重い。」
B「それは、なぜか?」

A「柔らかい豆腐は本来“在る”もので、誰しも柔らかい豆腐は“在る”ものとして認識していて、それは何もおかしなことはなくごく当たり前のことだ。そのような先入観があるから、実際に“在る”ものが実は“無い”とすれば、その“本当は無かった”ものは“元々無い”とされていたものとは違い魅力的に感じるからだ。」
B「根本的な話として、柔らかい豆腐が“在る”という先入観そのものが“無かった”としたらどうか?」
A「その答えは人によるとしか言いようがない。」
B「それは、なぜか?」

A「どちらも元々“無い”のなら、これは結局柔らかい豆腐と固い豆腐のどちらが好みかという話になる。私は固い豆腐を好んだとしても、他の者は柔らかい豆腐を好むこともある。」
B「結局“在る柔らかい豆腐”を食べたことで満足はできたか?」
A「満足はしていない。」
B「それは、なぜか?」

A「美味くなかったからだ。」