前記事 →一生忘れない…リベンジを誓う。
口には出さなかったけれど
それからのレッスンの中で
あのステージでの経験が
トラウマになっていることを
度々感じていました。
伴奏もよく引き受けている彼女。
人前で弾くのがダメ
ここで弾くのもなんか緊張する…
あまりしんみりしないように
彼女の言葉は受け止めつつ
相槌はサラッと、を心がけました。
今年の発表会の案内を出す頃
「出るよ、」
そう彼女が言いました。
強いな…
今年がきっと最後になる発表会。
発表会2週間前。
レッスン終わりの
彼女の表情や空気が
気にかかって
週末に時間を取りますが…
とお母さんに連絡を入れると
今そのことを思っていました…
と返信が来ました。
一人一人環境も性格も違う。
一年前のこと
彼女が抱えているもの
それを思うと無関心ではいられなくて。
日曜日は自分の本番がありました。
お家の方には予定があったので
帰りに途中で待ち合わせて
一緒に家に帰りました。
「これから30分くらい
家のことしてくるから
好きなように練習してな…」
「うん、分かった」
時間が来てレッスン室に行き
演奏を聴くと
「なんか今日調子いい〜
」

と笑っていた。
今回はちゃんと弾けている。
精神的なものだけだ…
本人も堪能して
予定より早く送り届けました。
翌週、最後のレッスンも終え
発表会の日が来ました。
出番よりもかなり早い時間に
私の側に現れました…
「無理…
ヤバイんやて…」
「気持ち分かるよ…
」

プログラムにそって
子供達を送り出し
労い迎え
舞台袖はバタバタだったけど
彼女をまだ早いと帰すことは出来ず
居たいようにいさせました…
そして出番に向けて
再び彼女が現れました。
先生の仕事をしながら
彼女の様子は気にしていました。
出待ちに並べられた椅子。
人と離れたところに座り
闘っていました。
立ち上がり
人と離れ
闘っていました。
トラウマと闘っているのが
痛いほど分かりました。
次。
舞台袖に立つ。
「無理…無理…」
「一人で行ける?」
「もっと側まで来て…」
前の子と椅子の高さは同じだったので
行かなくて良かったけれど
「じゃあ、椅子の高さを
変える振りをして
ついて行くね…」
椅子に座った彼女の肩に
想いと祈りを沢山込めて手をかけ
「がんばれ!」
小声でそう声をかけ
袖に戻りました。
トラウマに勝った…
もっと弾けていたから
本人にとって
100パーセントの演奏では
なかったかもしれないけれど
本当に立派でした。
ステージに立ってくれてありがとう。
ピアノをやめないでいてくれてありがとう。
音楽を嫌いにならずにいてくれてありがとう。
今、発表会が終わり
合唱の伴奏の練習をしています。
そして
次に弾く曲探しをしています。
指導者として
どうあるべきか
結論は出ません。
多分ずっと出ないと思います。
自身の中の変われない部分は
どうしようもない。
こんな私でごめんなさい。
そう思いながら
日々子供達を迎えています。
あの日の震える彼女
みんなの涙
祖父母の後ろ姿
忘れません。
自身への記録。