さんざ、これまで後ろ指をさされようと平気の平左でいたにもかかわらず、少しは罪悪感も感じたようで、ここ数日は本屋にも立ち寄っていないという変わりよう。これ、もしろん小生のこと。そんな柄にもないことは長続きしないのはあたりまえ。ニワトリに負けず劣らず、物忘れはだれにも負けぬのだから。柴田錬三郎『徳川浪人伝(上・下)』(新潮文庫)を読み終えたこともあり、大袈裟にも禁断を打る心持ちで本屋に立ち寄る。うわー、空気が旨いねぇ。古書店の醸し出す芳潤な紙の”にほひ”にはかなわぬも、まだ早熟な本が発散する初々しさも悪くない。なんとも落ち着いた気分になり、ゆったりと本棚を眺めまわすと、三ヵ月ぶりに発売されたばかりの愛読するカー雑誌を見つけたので、ひょいと抜き出す。ぺらぺらめくると、車種別燃費対決なるものがあったので、さっそく拾い読みする。しばし読むも、ゆっくり家で楽しもうと、安直に購入を決意。「少しは悩め」と自分に突っ込みを入れてみる。あれこれ手に取る中で『ツチノコの民俗学』がどうしても気になるが、今度ばかりは自重する。どこかの古本屋で逢おうぞ!と別れを惜しみつつ別の棚へ。浅草弾左衛門に関する文庫を手に取っちゃ、下ろすを繰り返し、結局、元に戻しついでに棚の整頓もする。三十分ほどもうろついた頃、同じく塩見鮮一郎氏の新刊『貧民の帝都』(文春新書)を見つけてしまい、あえなく撃沈。それでも併せて二冊という小食な買い物をして、そそくさと帰るのであった。
- ツチノコの民俗学―妖怪から未確認動物へ/伊藤 龍平
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貧民の帝都 (文春新書 655)/塩見 鮮一郎
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