今日から梅雨入りだと。鬱陶しい季節になったなあ。ジトジトじめじめ。壁はナメクジだらけになるし、喰いもに黴ははえるし、あっ、これは梅雨に限ったことではないか。こちとら今日から、竹中英太郎先生装丁、下村千秋『天國の記録』(中央公論社)を読み始めた。ところどころに英太郎先生の独特の挿し絵が入るのが嬉しいのだ。どれどれと読み始めれば、いや、なんとも悲惨な銘酒屋へ転々と売られる夫婦の話じゃあないか。銘酒屋と云っても単なる飯屋や飲み屋のことじゃなくて、私娼のことなのである。遊郭などの公娼と違って、無許可で勝手にやるものだから、そりゃあ、取締も厳しいわけで、留置や罰金もそりゃあ大変らしい。話はまだ30ページほどなのに、その流転は凄まじい。なんたって、銘酒屋の主人というのが、医者だの酒屋だの八百屋、化粧品屋、荒物屋といった私娼窟に売られてきた女達の生活と直接関係持つ者たちで、此奴らが周旋しているのだから、女たちはたまったものじゃあない。まさに寄生虫なのである。どうやらここも、さらに鬱陶しい。