どうも近頃は読書欲が減退中である。もともとむつかしい本や分厚い本は苦手だから、手軽な随筆などを読むのが好きなのである。そこで選んだのが、つい先日大手古本チェーン店で購入した、北杜夫・阿川弘之、両奇人による対談集『酔生夢死か、起死回生か。』(新潮文庫)。文字も大きく、何よりページ数も少ない。つまみ食いにはちょうどよい。通勤時の電車の行き帰りにはもってこいである。話はマンボウ氏の体調不良から始まる。北杜夫も年取ったものだなあ、などと思いながら、読み進める。相変わらず躁鬱病に悩まされている姿と物言いが失礼ながら滑稽で、阿川さんとのやり取りが、実に可笑しい。「死にたい死にたい」を連発するマイペースのマンボウ氏を、ひらりひらりと、なだめすかして上手にかわす阿川さんの優しさが滲み出ていてる。対談には、マンボウ氏の父上、茂吉先生の作品も登場。その作品をこよなく愛する阿川さん。次から次へと茂吉の歌を口ずさむ阿川さんを想像して、実に記憶力の良い御仁だなあと感心した。また友人であった、狐狸庵先生や吉行先生のエピソードも時々顔を出すし、両人の奥方様も要所要所で話のツマにされている。そんな掛け合いからも二人の間柄が目に浮かぶようで、なんとも微笑ましい対談集であった。ただし、薄いからすぐ読めてしまう。お陰で帰りには、菊池寛『半自叙伝 無名作家の日記』(岩波文庫)を買う羽目になってしまった。


酔生夢死か、起死回生か。 (新潮文庫)/阿川 弘之
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