『隠語辞典』(楳垣実編・東京堂)というのがある。今手元にあるのは昭和三十六年八月発行の十一版である。初版が昭和三十一年八月であるから五年で十一版とは、一回あたりどの程度刷っているのかは分からぬが、なかなか人気の辞書といえるのではなかろうか。とくに理由もなく、暇なのでたまたまペラペラめくっていたら、「六四よ」の箇所が面白かったので少し記すとしよう。


むしょ(六四よ) 刑務所。〈「六四寄せ場」の下略語の訛〉《「刑務所」の上略語のように思えるけれども、「監獄」を「刑務所」と改称した(大正十一年)以前から使われている》


むしよせば(六四寄せ場) 監獄。刑務所。むし。むしょ。


むし(六四) 監獄。刑務所。〈昔は刑務所の飯は麦六分;米四分だったので「六四」と呼んだ。〉


すっかり刑務所を略して「むしょ」と呼んでいるのかと思っていたが、「六四寄せ場」の略とはしらなんだ。世の中知らぬことがなんと多いことか・・。