昨日から他の書籍を脇にのけて、『幽』に取りかかっている。その中で「怪談ハンター」なる連載企画があるのだが、今回は建築業者に聴いた怪異談を収録している。これがゾクリと怖くていい。土地にまつわる因縁談はあまたあるだろうが、このような日常的に接する職業人たちの証言は興味深い。小生が学生時分の話しであるが、某阿呆学校で民俗学や宗教学などを囓っていた頃、同級生に建築会社の息子がいた。なぜ建築や土木などを学ばずに、このような大学に来ていたのか訝しく思い、その理由を尋ねたことがあった。すると、彼は事も無げに、「何故って理由は簡単さ。家を建てる際には方位だとか、しきたり、儀式などを知っておく必要があるからだよ」と言ってのけたのだ。まさに職の現場で息づく、連綿と連なる守るべきものがあることを改めて理解したのだ。


小さい頃から、由来のわからぬ石碑や神社巡りなどをよくおこなったものだ。たまには廃屋探検と称し、肝試し気分で打ち捨てられた空き家を無断で入り込んだりもした。それでも怖くなって二度とは足を向けなかったが。その頃より今に至るまで、道路拡張工事などで近所の道祖神や地蔵尊の位置が変更になると、良くないことが起きそうだと心配してしまう臆病者なのである。しきたりを合理的に解釈することは出来ぬけれど、願わくば、いにしえの教えに耳を傾ける姿勢だけは忘れたくないものだ。