坂本龍一さんを取り上げた意外な番組から、私なりに思うところがあった。

先日にNHKの特集番組を視聴して思ったことが多々あったものの、彼の死を私のブログの記事にする勇気はなかった。
しかし、今回、別のNHK番組「サラメシ」で彼の愛したお店の食事が紹介されているところを視聴して、なぜだか目頭が熱くなった。私にしては珍しいことである。
この世に在らずとも人に慕われ続けるということ、死してなお、その精神は生き続けているということ。
偉大な人であることは当然のこととして、その死によって彼のすばらしさが生前よりもクローズアップされることとなった。
全てがうまくいって生きている人など、この世にはいない。どんな人でも、身をよじりたくなるような失敗や汚点、苦悩や恨みの記憶、悲しい出来事等、思い出したくないこと、忘れてしまいたいこと、その他様々なマイナス要素もあるはずだ。
もちろん、私だって同じこと。生きていることは即ち苦なのであり、その中でささやかな幸せを求めてもがきあがいているのだ。
死ぬことにより負の部分が消去あるいは暗黙の了解として包み隠され、人々が語る思い出が全てがプラスの内容となるだろうと信じることができれば、こんな私でも悔いなく死を迎えることができるのだろうか。自分が死んだ後も悪く言われるのだろうなと思いながら死にたくはない。
坂本龍一さんの死は悲しくショックだったが、私にとっては、自らの命の最期がいずれは訪れるということを自覚することができたという側面もあった。美しく死ぬためには、限りない努力や労力が必要なのである。すばらしい音楽を長年創り続け、私達の人生を潤いあるものにしてくれた彼に、心から感謝したい。ありがとう、という言葉しか思いつかない。